沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション
車の整備を長年の趣味としているTさんの家づくりは、ビルトインガレージと高断熱・高気密化がテーマでした。
高気密化を実現した新居には常にさわやかな空気が満ち、ガレージにいても、いつも家族とガラス越しにつながっています。
ビルトインガレージで愛車とともに暮らす
■ビルトインガレージにあこがれて始めた家づくり
アパートに住んでいた頃から車のエンジンやミッションをベランダに持ち込んで分解したり、炎天下の駐車場で延々と整備するほど車好きのTさん。ビルトインガレージのある家へのあこがれが募り、家づくりに取り組むことになりました。
「妻と住宅完成見学会へ足を運ぶうちに、予算内でガレージ付きの家を建てるには、木造がベストだと気付きました。でも最初の頃は、梁や柱を生かしたデザイン性ばかりに気を取られていましたね」と話すTさん。元来の凝り性に火がついて住宅関連本を読み込むうちに“高気密”というキーワードにたどり着きました。
「私と長男がアレルギー気味なので、シックハウス対策として24時間換気を検討したのがきっかけです。建物を断熱材ですっぽり覆い、外気に影響されにくい高気密な室内環境をつくり出せば、換気や冷房の効果は絶大。高断熱・高気密化を実現した住宅を見学した時、そのことを強く実感しました」と、家づくりの必須条件に“高気密化”が新しく加わることになりました。
Tさんは、タイミングよく高断熱・高気密な家づくりの実績を持つ設計施工会社と出会うことができ、その会社に、自ら探し出した断熱材や屋根材のメーカーを指定しました。「家づくりの考え方に共感できる部分が多かったので、打ち合わせはスムーズ。計画から施工まで安心してお任せできました」と言います。
ワンルームタイプの子ども室。将来は2部屋にして使うことを想定し、共有の出入口は広くとりました。レールのないフラットな床と大きな出入口のおかげで、子ども室とリビングに一体感が生まれるというメリットも
内部はインテリアが映える白基調のシンプルな仕上げ。リビングの天井は高いところで約6mあります
モダンに仕上げた和室は、育児スペースとしても活用できる便利な空間です。建具はオリジナル制作
お気に入りの雑貨やツールに囲まれたキッチン。対面式なので料理中も家族団らんが楽しめます
■省電力効果を最大限に引き出す高気密住宅
昨年暮れに完成したTさん宅は、大きな切妻屋根と白と茶色の外壁の組み合わせが個性的な佇まい。内部は建物の約3分の1の広さを占めるガレージと、LDKと子ども室、寝室を配した居住スペースに分かれています。木部の仕上げには無添加ワックスを使用し、木の優しい質感を生かして、インテリアが映える空間をつくり出しています。
Tさん宅の一番のポイントは、何といっても高断熱・高気密化を実現した住宅性能にあります。屋根は特殊シートを用いた高遮断熱構造で、外壁にはクラックを防ぐ伸縮性能と断熱効果を併せ持つ塗料を採用。窓際には断熱ガラスと樹脂サッシを取り付けました。さらに、建物全体を水発泡した断熱材で覆ってすき間をなくし、室内の気密性を高めています。アレルギー症状の原因となるハウスダストなどを計画換気システムで効率良く排除しており、室内の空気はいつもさわやか。今年誕生したばかりのお子さまも含めて、家族の誰一人としてアレルギー症状は出ていないそうです。
思い通りの家を建てたTさんは、「リビングの窓越しにガレージが見え、車を整備している姿を子どもたちに見せられるのがうれしいですね。アパート暮らしの時は、いつも家にいないと思われてましたから」と喜びいっぱい。新しい住まいのおかげで家族と愛車との距離はぐんと縮まりました。
外観はシャープな白壁に優しい板目調の外壁材を組み合わせ、シンプルながらも温かみを感じる雰囲気に。屋根にはグラデーションの効いたアメリカ製の屋根材が使われています
「住み心地」という性能を備えた省エネ住宅
■測定結果が示した高断熱・高気密性 ―― 建築士・大木聡さん談
敷地は平坦地で、クチャと呼ばれる安定した地盤上にあります。車の整備が趣味の施主の必須条件はビルトインガレージ。また、ご本人とご長男がアレルギー体質ということもあり、室内のきれいな空気にこだわりがありました。
間取りのポイントは、ビルトインガレージとリビングを大型のFIXサッシ越しに隣接させ、どこにいても家族同士の気配を感じ合えるようにしたこと。風雨の強い日でも濡れずに家の中へ出入りできます。水回りでは、インナーバルコニーを配置して家事動線を短縮したり、濡れずに洗濯物を干せるようにして、奥さまの家事負担を軽減しています。また、前面道路側の開口部は小さめに、ビルトインガレージやインナーデッキには大きな開口部を設けて、外部と緩やかにつなぎ開放感を創出しました。
なお、開口部は、国産の樹脂サッシとペアガラス(Low-E)を採用。さらに小屋裏、躯体、基礎、住宅全体を吹き付け断熱材で覆って、気密性と断熱性を高次元で両立させました。
国が提唱する次世代省エネ住宅では、気密性を示すC値は5㎝/㎡(沖縄)を基準値としていますが、Tさん宅はその10分の1の0・5㎝/㎡という測定結果を叩き出しました。なお断熱性能を示すQ値は1・7W/㎡・K(沖縄の基準値3・7。数値が小さいほど断熱性が高い)でした。
この高断熱・高気密のおかげでセントラル換気による計画換気が有効に機能し、クーラーを使用した7月の電気料金は1万円(2・2キロワット×3台・24時間運転)と、電気代の低減にも貢献しています。このほか全体的なコスト配分にも配慮して、屋根材や主要躯体木材、跳ね上げ式のガレージドアなどの趣味の道具をすべて同時に海外から直輸入し、コストダウンを実現しています。
右/玄関スペース。気密性を最優先にしながらも、通風と採光を考えた開口計画がなされているので、窓を開け放てば涼しい風が入ってきます
左/ブックスタンドや洗面ボウル、トイレットペーパーホルダーもオリジナル制作です
屋根裏から断熱材を見る。水と空気の力で発泡する断熱材は、きめ細い泡状になって梁や柱、壁などに密着し、わずかなすき間にも充填されます。熱の移動やほこり、湿気を防いで結露が起こりにくい環境をつくり出します
計画換気システムにより、家の中の空気を24時間コントロール
太陽光赤外線を70~80%を反射する屋根構造
アルミ窓の1/1000の熱伝導率、1/3の熱損失といわれる国産の樹脂サッシとペアガラス(Low-E)を採用し、窓からの熱の流入出を防ぐ
熱伝導率が少なく、伸縮性、防水性、断熱性を兼ね備えた外壁塗料。光触媒による洗浄効果も
写真提供・株式会社りーふ
大木聡さん
■家づくりのヒント
■手すりにブックスタンドの機能を付加
トイレや玄関の壁に造り付けられたブックスタンド。実はこれ、長期固定金利住宅ローン「フラット35S」を利用するために設置した「手すり」なのです。フラット35Sとは、省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性・耐久性のいずれか1つ以上の基準を満たした住宅に対する優良住宅取得支援制度。設置が必須条件となっている手すりに、ブックスタンドとしての機能を付加し、お気に入りの本や雑貨が飾れるインテリア性を備えました。またTさん宅は次世代省エネ住宅の基準も難なくクリアし、住宅エコポイントも取得したそうです。
- ■株式会社りーふ
- りーふは、設計から施工まで一貫して理想の住まいづくりのお手伝いができるよう心掛けています。
- 宜野湾市伊佐3-3-21
- http://leafreef.ti-da.net/
- 家族構成:
- 夫婦、子ども3人
- 所 在 地 :
- 八重瀬町
- 設 計:
- (株)りーふ 担当者名/大木 聡
- 敷地面積:
- 231.50㎡(70.03坪)
- 建築面積:
- 127.23㎡(38.49坪)
- 延床面積:
- 住宅/85.162㎡(25.76坪)
ガレージ/42.068㎡(12.73坪) - 用途地域:
- 未指定
- 構 造:
- 木造枠組壁工法
- 完成時期:
- 2010年12月
- 施 工 業 者
- ●建築/(株)りーふ
- ●電気/未来電気設備
- ●水道/(有)當山設備興業
- ●キッチン/タカラスタンダード(株)
- ●システムバス/パナソニック電工リビング九州(株)