沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション
スペイン瓦を載せた南欧風の佇まいが目を引くFさん宅は、シャッター付きのカーポートや8畳2間続きの和室など、親子世帯それぞれのこだわりをちりばめた、完全分離型の2世帯住宅です。
カーポートのある南欧風2世帯住宅
■外国人住宅風の住まいをイメージ
青空に映えるスペイン瓦を載せた南欧風の家。植物をモチーフにした鉄製の面格子や自然石で装飾を施してアクセントをつけた佇まいが、緑豊かな街並みに彩りを添えています。この家は、県外への単身赴任で家族の元を離れていたFさんが、沖縄転勤を機に建てた2世帯住宅。1階にFさんのご両親、2階にはFさん一家が暮らしています。
家づくりに当たって、車が好きなFさんはシャッター付きのカーポートを必須条件とし、インテリアにこだわりのある奥さまは、外国人住宅のような家をイメージ。1年近くかけて情報収集しましたが、予算やイメージが折り合わず、設計の依頼先はなかなか決まらなかったそうです。そんな中、外国人向け賃貸物件の見学会で出会った設計施工会社のデザインが気に入り、プランを依頼。「提案されたラフプランも抜群に良かったです」と、この会社を家づくりのパートナーに決めました。
打ち合わせでは、木材の伸縮などによって床がきしみ、下階に迷惑をかけないよう2階は床梁の間隔を狭くするなど、目に見えない部分にもこだわったFさん。「私は妥協しないように心がけていましたし、父は2度目の家づくりということもあって、例えば、客間の和室は8畳2間が必要というような前回の家づくりを教訓にした要望がいくつもありました。親子世帯そろって話し合う機会が増え、団結してこの家をつくり上げた感じです。担当の方は大変だったと思いますが、多くの要望を確実にプランに反映してくれました」と振り返ります。
子世帯玄関。玄関から入って右奥には大容量のシューズクロークがあります
子ども室や寝室は、部屋ごとに壁の色を1面だけ変えています
LDK[子世帯]
好みのインテリアが引き立つよう、擬木やニッチの設置、壁の色など、デザイン性にもこだわったLDK。勾配天井の一番高い位置にハイサイドライトを設置して、自然光を室内の隅々にまで行き渡らせています。ダイニングに設けたカウンターは収納付きとなっており、使い勝手がよさそうです
LDK[親世帯]
掘り込み天井にシーリングライトや間接照明を設置して、落ち着きのある空間を演出しています。リビングから水回りへアクセスするには、アーチ型の開口をくぐってキッチンを通る動線と、廊下を通る動線の2カ所を確保。コンパクトな生活動線を実現しました
■カーポートは建物にビルドイン
Fさん宅は、建物の中央部に配した外階段を介してつながる完全分離型の2世帯住宅です。シャッター付きのカーポートもビルドイン。その奥の作業スペースには、車の整備に使う道具や部品を整然と並べています。
内部は、親子世帯ともに南側に開いたLDKを中心に居室を配して、水回りの動線を西側にまとめた配置が基本となっていますが、間取りや設備、内装仕上げなどについては、それぞれの世帯のこだわりやライフスタイルが反映されています。
例えば親世帯は、大勢の来客に備えた8畳2間続きの和室やデッキテラスのほか、お父さまが趣味の三線に没頭できる約3畳の趣味室など、円熟したご夫婦の暮らしに合った造り。一方の子世帯は、リビングを勾配天井にして擬木の梁を取り付け、さらに南側のバルコニーに面した開口部はフルオープン可能な窓を設置して開放感を演出。Fさん一家のスタイルを表現して、居心地のいい伸びやかな空間をつくり出しています。
新居が完成してから、休日の過ごし方が変わったというFさん夫妻。「外出していても息子が家に帰りたがるので、庭でバーベキューをするなど家族で過ごすことが多くなりました。また、息子は私たちにしかられると1階へ行き、そこでおじいちゃんおばちゃんに諭されて帰ってきます。子育てにも優しい環境ですね」と、1つ屋根の下で営む3世代の暮らしを心から満喫しています。
右/子世帯のキッチンもアーチ型の開口にして、リビング側から見えすぎない造り。レンガ調の壁材は、奥さまがセレクトしたという木目を生かしたキャビネットとの相性もぴったりです
左/子世帯の水回り。入浴中も気兼ねなく洗面室が使えるように、脱衣室と洗面室を分離しています
LDK[子世帯]
リビングの並びには、30センチほど床高を上げて和室を確保。和室の床下の一部は収納スペースとなっています。リビングの天井梁は、コストを抑えるために発泡スチロール系の擬木を設置。表面の凹凸がリアルにできているので、一見しただけでは擬木とは気付きません
和室[親世帯]
Fさんのお父さまがこだわったという8畳2間続きの和室。壁の中に千鳥格子柄の襖が収まるよう戸袋を設置しており、大勢の来客の際はひと続きのダイナミックな和空間となります
家族の絆が深まる2世帯住宅
■共用エントランスで程よい距離感をつくる ―― 担当・波照間正作さん談
Fさん宅は、うるま市の閑静な住宅街の角地に当たり、近隣には学校や病院、商業施設などもあり子育てに適した環境です。ほぼ真四角の敷地形状と北東に開いた立地条件を生かして、東向きの玄関、南側に開いたパブリックスペース、西日を利用して湿気をこもりにくくした西側水回りなど、沖縄の風水の理にかなった配置を実現しました。
各世帯の要望やライフスタイルに合わせた間取りは、いずれもLDKを中心に配し、水回りは家事動線をコンパクトにするために、行き止まりのないサーキュレーション(回遊型)動線を実現。さらに上下階の水回りを縦並びにそろえることで、配管などにかかるコストの削減につなげました。
2階の子世帯には、カーポートの屋根を利用したルーフテラスや各居室にバルコニーを設けるなどして、庭代わりとして使える外部空間を確保。リビングの並びにあるダイニングにはカウンターを設置していますので、家事をしながらお子さまの勉強を見たり、気軽にノートパソコンを開くなど、ご家族で活用できるスペースになったと思います。
内部は細部に至るまで施主のイメージに沿えるよう、当社のカラーコーディネーターとインテリアコーディネーターが対応。壁紙や部材などの選定をアドバイスするなどして部屋ごとに雰囲気を変えています。
Fさん宅は、外階段でつなげた完全分離型の2世帯住宅ですが、エントランスを共用にすることで、親子世帯に程よい距離感がつくり出せたと思います。外出先から早く家に帰りたくなるほど居心地が良く、休日は家族団らんを楽しんでいると施主からうかがい、私たちが目指す「家族の絆を深める家づくり」の成功を実感でき、うれしく思っています。
リビングからダイニング・キッチンを見る。Fさん夫妻が購入したアンティークの窓に合わせて、その手前に素朴な雰囲気のニッチを造り付けました。インテリアとしてだけでなく、窓越しに家族の気配を伝え合うという役割もあります
カーポートの奥は、車を整備するための作業机や倉庫、コレクションのミニカーを飾る棚を設置。Fさんはここで作業をしていると時間が経つのも忘れてしまうそうです
青空がよく似合う南欧風の外観。建物にビルドインしたカーポートのほか、建物の手前にも駐車スペースがあります
波照間正作さん
■家づくりのヒント
■素材の機能とデザイン性を最大限に生かす
2階の玄関ポーチに面する壁の一部には、ガラスブロックを設置しています。これは暗くなりがちな廊下に光を取り込むと同時に、ポーチの外観にデザイン性を持たせています。さらにガラスブロックを背に、ポーチにベンチを造り付けているので、ちょっと腰掛けたり荷物を仮置きするのに便利なだけでなく、グリーンやウエルカムボードを飾るなど、さまざまな使い方で楽しめそうです。
- ■(株)アイムホーム
- 北谷町北前1-2-7 津嘉山ビル101
- http://www.imhome-okinawa.co.jp
- 家族構成:
- 両親、夫婦、子ども1人、愛犬
- 所 在 地 :
- うるま市
- 設 計:
- アイムホームデザイン
担当/山内 直 - 敷地面積:
- 367.80㎡(111.25坪)
- 建築面積:
- 193.27㎡(58.46坪)
- 延床面積:
- 461.47㎡(139.59坪)
- 用途地域:
- 第一種低層住居専用地域
- 構 造:
- 壁式鉄筋コンクリート造
- 完成時期:
- 2011年10月
- 施 工 業 者
- ●建築/(株)アイムホーム 担当・波照間正作
- ●電気/(株)フジタ電建 担当・藤田則夫
- ●水道/ダイユウ設備 担当・大嶺自雄
- ●キッチン/パナソニック 担当・又吉清寿