• life in okinawan house
  • life in okinawan house
  • life in okinawan house
  • life in okinawan house
  • life in okinawan house

沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

コンクリート打ち放しのクールな外観と、広さが際立つLDKが印象的なHさん宅。
デザイン性と居住性がバランスよく保たれた空間の中に、家づくりにかけるご夫妻の思いやこだわりが隅々まで詰まった、都市型の住宅です。

光と風が行き渡る上質な家

光と風が行き渡る上質な家

■理想の住宅像を求めて素材を厳選

 Hさん宅の特徴をひと言で表すなら、「こだわりを尽くした家」といえるでしょう。土地も、間取りも、素材も、デザインも、可能な限りベストの条件を追求し、3階建ての新居を2年ほど前に築きました。
「一つ一つのパーツを決めるのに、ものすごい労力と時間を費やしました。建築現場にも毎朝出勤前に足を運んで、進ちょく状況をチェックしていましたね。職人さんと直接やり取りしながら、仕上がりイメージのすり合わせを行うこともよくありました」とご主人は振り返ります。
 出来上がった家を見ると、コンクリート打ち放しの外観や、余計な装飾がなく白いタイル貼りでまとめたLDKは、手が込んでいるというよりむしろ“シンプル”“クール”といった形容がしっくりくるように思われます。しかしそれは「生活感を表に出さずに、いつでも広々とすっきりとした状態で暮らしたい」というHさんご夫妻の嗜好が表れたもの。シンプルな中にもディテールは緻密に練り上げられており、例えばコンクリートの打設にあたっては、希望の色味になるよう事前にテストを繰り返し、床タイルも好みの質感を求めて、国内外の製品を調べて回りました。
 こんなエピソードもありました。キッチンにはセンサー式の自動水栓を設置しようと情報を集めていたところ、センサーの位置も、デザインも、文句のない製品を見つけました。しかし、手をかざしてどれくらいのタイミングで水が流れるのか、使い勝手が分かりません。そこで奥さまは「キッチン業者さんを通じて、過去に導入した施主さんを紹介してもらい、実際に体験しに伺いました」とのこと。結果は期待通りの使い心地で、晴れて導入の運びとなりました。
 すべてにおいてそんな調子ですから、検討した間取りは20パターン以上を数え、キッチンの高さやコンセントの位置、取っ手の握り具合などはもちろん計算済み。「いつになったら家が建つのだろうか」とご本人が思ったかどうかは、定かではありません。

光と風が行き渡る上質な家

リビングで一家団らん。室内のデザインは、ご主人お気に入りのソファセットが引き立つように決めていきました

光と風が行き渡る上質な家

ダイニングからリビングを眺める。1階東側の壁面は収納スペースになっています

光と風が行き渡る上質な家

2階勉強室はご主人の書斎も兼用。壁際にカウンターを設置して、集中しやすいように天井高を低くしました

光と風が行き渡る上質な家

エントランスからリビングへ続く廊下は、LDKの開放感を引き立てるドラマチックな演出空間

光と風が行き渡る上質な家

キッチン。つり戸棚がなくレンジフードも下引きで、いつでもすっきり。正面の窓がビルトインガレージ、その上が勉強室です

光と風が行き渡る上質な家

小上がりの和室。廊下を挟んでLDKとは完全に分かれているので、急な来客があっても気兼ねなくもてなせます

光と風が行き渡る上質な家

光と風が行き渡る上質な家

■周到な動線計画で楽しく住みこなす

 Hさん宅があるのは、区画整理され新しい家並みが広がる閑静な住宅街です。広めの道路から中に一本入ったブロックの南西角地。正面に中層のアパートが建っているため、通りに面した開口部の取り方はやや控えめですが、打ち放しのコンクリートで覆われた外観は、どっしりとした存在感があります。
 朱色に彩られた玄関の扉を開け、右手の格子戸越しに和室を眺めながら廊下を抜けると視界が一変。広さ約50畳、まるでホールのように明るく爽快な、2層分の吹き抜けをもつLDKが現れます。リビング南側の中庭に面した窓は天井まで全面ガラス張りになっているため、開放感が一層高まります。
 間取りは1、2階のほぼ東半分をLDKとその窓の外につながる中庭が占め、西半分は1階にビルトインガレージと和室、2階に勉強室と主寝室が配置されています。3階はLDKの上に当たる部分に子ども室が並び、他のスペースは水回りになっています。
「全体的に凹凸がなく、フラットですっきりとした造りなので、掃除をするにも広さの割には手間がかからないんですよ」と奥さま。キッチン周りの動線も使い勝手よく組み立てられており、「車の出入りや、勉強している子どもたちの様子が分かるように」と、キッチン西側の壁には1、2階それぞれに窓が設けられています。
 住み心地も快適です。LDKの床材をタイルにしたことで、「冬は冷たさが気になるのではないか」と当初は懸念したそうですが、中庭に面した窓から室内にほどよく日が差し込んで暖かく、逆に夏は太陽高度が高いため日が入らず、足触りは爽快です。また「日中とは違った夜の雰囲気も大好きなんです」と話すように、日が落ちると中庭の植栽がライトアップされムードを演出。日々の移ろいを感じながら、楽しく住みこなしているようです。

光と風が行き渡る上質な家

南側前面道路からの外観。家の外周や中庭に置く植栽も厳選し、造園業者と一緒にやんばるの山中まで見に行ったそうです

空間をスムーズにつなぎ、統一感あるデザインと居住性を実現

■土地形状を生かし西日を意識した間取りの配置。ハイサイドライトやトップライトで採光計画 ―― 一級建築士・羽地仁さん談

 Hさんご夫妻は非常に熱心な勉強家。例えば一つの建材を決めるときも、与えられた情報やカタログの中から好みの製品を選ぶのではなく、ご自身のイメージに合ったものを一から探し求めるようなタイプでした。それだけこだわりが強く、確たる住宅像をお持ちでしたので、私の役割としては、お二人と共有したイメージをどう上質な建築にするか、内と外、空間と空間をどのようにつなぎ合わせ、統一感のある形としてデザインをどうまとめるか、要望を満たしつつ長く快適に暮らしていくには間取りや動線をどのように組み立てればいいか、といった点を建築物として構築していく作業が中心になりました。20分の1サイズの室内模型を何パターンもつくり、一緒にプランを煮詰めていきました。
 Hさん宅のある土地は、広さ100坪強、2面道路で南西角地という好立地です。ただし周囲に家やアパートが建ち並ぶ住宅地のため、外部の視線を遮りつつ採光と通風を図る都市型のプランニングになりました。また西側の道路面が東側より1メートルほど低かったので、高低差を生かしつつ西日対策として、1階西側にはビルトインガレージを設置。上階も同じように日差しの影響を考慮して、2階は収納を、3階は水回りを西面に充てています。
 リビング南側には大きく開口部を設けていますが、ほかのスペースにも隅々まで光が行き届くように、採光計画には特に気を配りました。LDKの東側の壁にはハイサイドライトを並べ、建物中央にあり暗くなりがちな階段や、北側最奥部のキッチン、勉強室にはトップライトを入れるなど、工夫を施しています。そして空間構成の大切な要素となる照明計画も、念入りに行っています。

光と風が行き渡る上質な家

LDKの天井高は5メートル以上。キッチン背面にあるハイサイドライトは両端を開閉でき、開ければ風の通り道となって、熱をもった空気を逃がすことができます

光と風が行き渡る上質な家

3階子ども室は成長に合わせて自由に仕切れるように、可変性のある造りになっています

光と風が行き渡る上質な家

2階と3階を結ぶ階段はトップライトで効率的に採光

光と風が行き渡る上質な家

郊外型とは異なり、さまざまな制約がある都市型住宅で、採光・通風とプライバシーの両立を図るには、中庭を生かしたプランはとても有効です

羽地仁さん

羽地仁さん

■家づくりのヒント

■ガラス張りの窓と中庭で内と外を緩やかに連結

光と風が行き渡る上質な家

Hさん宅の正面を覆う目隠し壁の内側には、全面ガラス張りのリビングとの間に中庭が設けられています。この中庭が、家の中に自然光を届ける光庭の役割を果たし、室内外を緩やかに連結。リビングから窓の外を見ると、都市型の家にありがちな閉そく感がまったく感じられず、視線が遠くへと抜けていきます。

■羽地仁建築研究所
那覇市銘苅3-1-20 098-894-5092
http://www.h-haneji.com/
家族構成:
夫婦、子ども4人
所 在 地 :
那覇市
設  計:
羽地仁建築研究所
敷地面積:
346.98㎡(約104.96坪)
建築面積:
206.84㎡(約62.57坪)
延床面積:
429.59㎡(約129.95坪)
用途地域:
第一種低層住居専用地域
構  造:
鉄筋コンクリート造
完成時期:
2011年11月
  • 施 工 業 者
  • ●建築/IMI CORPORATION
  • ●電気/屋富祖電気工事社
  • ●水道/沖縄水質改良株式会社
  • ●キッチン/有限会社モブ

カテゴリに戻る ›

週刊かふう特別編集
「こんな家に住みたい」セレクション

会員ログイン