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沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

糸満市の住宅街に建つTさん宅は、モダンで堂々とした家構えが印象的な、3階建ての2世帯住宅です。
吹き抜けを活用して親子世帯のほどよい距離感を保ちつつ、コの字形の機能的な間取りで住み心地を高めた、明るく穏やかな住まいです。

デッキでつながる笑顔の会話

デッキでつながる笑顔の会話

■縦横に広がるのびやかな視線

 吹き抜けになったデッキを住居がコの字形に取り囲み、2階に親世帯、3階に子世帯が重なった様相は、ヨーロッパのモダンな共同住宅を連想させます。両世帯は外階段でのみつながっていますが、家中どこにいてもデッキを基点に視線が縦横無尽に抜けるため、物理的な距離以上の近さを感じます。
 吹き抜けに架かるブリッジ状の3階アプローチを、孫たちがタタタッと元気に駆け回り、施主で祖父母のTさんご夫妻が温かく見守るそのシーンは、建築士の狙い通り。週末や休みの日には、独立して家を構える子どもたちの孫を預かる機会も多く、「にぎやかで託児所のようですよ」と奥さまはにこやかに話します。
 建て替えをして現在の家に住む前は、30年ほど前に購入した建売住宅で暮らしてきました。4人の子どもたちはやがてみな家を出て家庭を築き、ここ数年は夫婦2人の静かな毎日。一方で家のあちこちには傷みが目立ち始め、リフォームなどを検討しつつも決断を後回しにしてきましたが、「建て替えるなら2世帯住宅で」というご主人のひと声を受け、本格的に計画を開始。子世帯には、2人の子どもを抱え近くのアパートで暮らしていた末娘一家が入ることになりました。
 Tさんが新居に強く望んだのは、「子どもたちがいつでも集まりやすく、孫たちが伸び伸び遊べるように」することでした。幾つかの設計事務所からプランを提示してもらい、子どもたちを交えて家族会議をした結果、全員に評判のよかった建築士に依頼を決めました。

デッキでつながる笑顔の会話

階親世帯のTさん宅。和室からLDKを眺める。フローリングはカバザクラの無垢(むく)材を施工。窓の外にはデッキ越しにご主人の寝室が望めます

デッキでつながる笑顔の会話

前面道路からの外観。敷地奥の南側に向かって吹き抜けが開いており、通りからの視線はほぼ気になりません。住宅地のため、子どもたちが集まったときに駐車場所に困らないよう、1階に広々とスペースを確保しています

デッキでつながる笑顔の会話

1階の離れ(アトリエ)は8畳の広さ。庭に面して大きく掃き出し窓が設けられ、採光・通風にも優れています

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2階キッチン脇の家事室。窓の外には物干し場があり、アルミルーバーで前面道路からの視線をカット

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3階子世帯の子ども室。造り付けのロフトスペースは小さい子どもにとって絶好の遊び場所です

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2階キッチンからの眺め。1階にLDKがあった建て替え前と比べて「光がよく入り、静かで落ち着きますね」と奥さま

■公私の空間を廊下を挟んで対置

 Tさん一家待望の新居は、昨年11月に完成しました。打ち合わせから建築期間を通して、当初のプランから大きな変更こそありませんでしたが、基礎工事中に地下空洞が見つかったため、「耐震性を上げて、ガッシリとした造りにしてもらいました」と奥さま。それでも「外から見るとレストランみたいでおしゃれでしょう?」と話すように、Rのデザインをセンスよく取り入れながら、白とブラウンの2色でまとめられた外観は、整然とした住宅街にあって落ち着きのある気品を放っています。
 住居の間取りに目を移すと、親子世帯ともデッキ沿いの廊下を挟んでLDKとプライベートスペースが向かい合う、機能的な構成になっています。対面キッチンから正面に向かってダイニング、リビング、和室が真っすぐにつながって一つの大空間を形成し、キッチンのすぐ裏には水回りがコンパクトに配置されています。
 両世帯で大きく異なるのは、Tさん宅のキッチン横のスペースが家事室であるのに対し、上階はテラスにして、対面の子ども室が見えるようになっている点でしょう。また「基本的な造りは同じでも、それぞれ独立した世帯として個性を出したかったので」と、上階の内装デザインは娘さん好みの色合いに仕上げました。
 1階はピロティ構造で、駐車場の周囲にはまだほとんど手つかずの植栽スペースと、離れ(アトリエ)を併設。離れはご主人の書斎として使う予定ですが、「簡易シャワーとトイレがあるので、子どもたちが泊まりに来ても便利で安心。ほかにもいろいろと利用価値がありそうですね」と奥さま。子や孫との触れ合いを楽しみつつ、庭づくりの構想を練りながら、穏やかな時間を過ごしています。

デッキでつながる笑顔の会話

3階子世帯。フローリングはチークの無垢材、キッチンの収納は赤を選んで、2階とは違った装いにまとめられています

家族の交流が自然と深まる視界を計算した空間設計

■器具の存在を消すシンプルな照明計画。
すっきりとした納まりで室内の開放感を高める ―― 一級建築士・古堅健一さん談

 Tさん宅の設計では、親子世帯の適度な距離感を検討することに加え、他の子どもたち家族も集まってにぎやかに過ごしやすい空間構成にすることが大きな主題になりました。住宅地のため周囲に気兼ねなく暮らせるように、1階をピロティ構造にして駐車スペースを確保しつつ、2階と3階の住居スペースは吹き抜けを囲んで奥へと延びるコの字形にしました。唯一外へ開いた南側の境界にはアルミルーバーを立てて外部からの視線を緩やかに遮り、居室の窓も同じようにプライバシーに配慮して、施工中にTさんに立ち会ってもらい実際の見え方を確認しながら、ガラスを透明にするか半透明にするかなどを決めていきました。
 住居内の細かい工夫としては、視界の“取っかかり”がなく広々と感じられるように、幅木や回り縁などの部材を省いて床、壁、天井の取り合い部をすっきりと納め、廊下沿いの居室の戸はアウトセット引き戸にして、有効開口を広げデッドスペースをなくすとともに、見た目も壁にポンと戸を立てかけたような、上レールのないシンプルな造りになっています。また2階親世帯のリビングと和室の間の戸は、普段は開けたまま過ごすことが多いため、レール部分が少しでも目立たないように、戸の上部にL字金具を取り付け、天井には金具の先端が入るだけの細い溝を設けています。
 このほか照明計画にも気を配り、居室内はすべてダウンライトを施工しました。照明のラインをまっすぐ平行にそろえ、照明器具の存在を極力消して“明かりだけ”が感じられるように仕上げています。

デッキでつながる笑顔の会話

3階キッチンからテラス越しに子ども室を眺める。白とピンクの床タイルが華やかな雰囲気を演出

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吹き抜けにブリッジ状に架かる3階アプローチ

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2階玄関ホール。各居室の入口には上枠のないアウトセット引き戸を設置して、廊下をすっきりとした印象に

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2階リビングから和室方向の眺め。LDKと和室の間には半透明のポリカーボネート板でしつらえた間仕切り戸があり、自由に開閉できます

古堅健一さん

古堅健一さん

■家づくりのヒント

■2世帯を緩やかにつなぐ吹き抜けをパーゴラ&ウッドデッキで雰囲気づくり

デッキでつながる笑顔の会話

上下階に分かれた親子世帯を緩やかにつなぎ、採光・通風面でも大きな役割を果たしている吹き抜けスペース。3.6メートル×5.7メートルと約2間の広さがあり、床にはウッドデッキを施工。晴れた日はトップライトからパーゴラの影が落ち、時間ごとにさまざまな表情が楽しめます。

■一級建築士事務所FAD
浦添市内間2-1-2 国仲ビル3階 098-874-8066
http://www2.odn.ne.jp/fad
 
■沖縄家作人NET(おきなわやーつくやーネット)
同ネットに家づくりを依頼すると、(1 12社の設計事務所に建築プランを頼める (2 見積もり提出後に施工業者を選定できる。完成後の10年保証付き (3 県内銀行との提携により住宅ローン基準金利より1.2%優遇金利の適用が可能、といったメリットがあります
那覇市前島2-8-13 098-869-3313
http://www.8298net.jp
家族構成:
親世帯・夫婦
子世帯・夫婦、子ども2人
所 在 地 :
糸満市
敷地面積:
297.67㎡(90.04坪)
建築面積:
136.69㎡(41.34坪)
延床面積:
333.85㎡(100.98坪)
1階 130.38㎡
2階 108.79㎡
3階 94.68㎡
用途地域:
第一種低層住居専用地域
構  造:
鉄筋コンクリート造
完成時期:
2013年11月
  • 施 工 業 者
  • ●建築/有限会社國真住建
  • ●電気/榮電舎
  • ●水道/有限会社丸栄電気水道工業

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