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沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

斜めに切り取られた屋根が個性的なデザインとなって、スタイリッシュな印象を伝えるTさん宅。
土地の条件を上手に生かし、優れた眺望と快適な住み心地を手に入れた、開放感あふれる住まいです。

視界が開ける2階リビングの家

視界が開ける2階リビングの家

■眺望と木のぬくもりに癒やされる

 眺めのいい家です。全面ガラス張りになった2階リビングの窓の外には、眼下に那覇の街並みが広がります。開放感を求めて、法令制限いっぱいまで延ばした2階の天井高は、最大約4メートル。リビングの奥に控えるダイニング、キッチンまで、細長いワンルーム的な空間がつながっています。どこにいても窓のほうに目をやると、まるでフロアの空気ごと、外に向かって真っすぐ突き抜けていくようです。
「近所のマンションに住んで18年。眺めがよく生活にも便利な住環境で、同じエリアにいい土地が見つかれば一軒家を建てたいと常々考えていました」と話すTさん。なかでも「以前から気になっていた」という現在の土地が3年ほど前に売り出されたことを確認すると、さっそく購入。新居は一昨年の暮れに完成しました。
 土地を選んだ時点で、住居の大まかなプランは自然と絞られました。一帯は古くからの住宅がひしめき合う密集地とあって、視界が開けた方角を除く三方は、隣地の建物が間近に迫る総ふさがりの状態です。また自慢の眺望は、前面道路を挟んだその先に広がっています。景色を最大限に楽しめるようリビングをはじめ生活スペースを上階に置き、下に主寝室や子ども室などのプライベートスペースをまとめた2階建てのプランに落ち着きました。
 デザインの方向性も早々に固まりました。例えば「木目に包まれているような雰囲気のリビングにしたかったんです」というご主人のイメージに合わせて、床には明るい色合いのフローリングを施工。壁と天井にも、室内全体に一体感が生まれるように同じ風合いの内装材をコーディネートしました。眺望と木のぬくもりに癒やされる、安らぎ深い空間に仕上がっています。

視界が開ける2階リビングの家

1階は白のタイル貼りでまとめてスタイリッシュな雰囲気に。踏み込み板のないストリップ階段が空間の奥行き感を増幅し、玄関ホールから階段にかけての吹き抜けスペースには、トップライトによる光の演出がしっかりと効いています

視界が開ける2階リビングの家

リビングのソファに腰掛け夫婦歓談。明るく開放感のあるパティオと、木目の温かい雰囲気がほどよいバランスを保ち、屋根形状に合わせて勾配の付いた天井が“くるまれ感”を高めています。背後に見える白壁は階段の吹き抜けに当たり、特大サイズの絵画を飾れるようになっています

視界が開ける2階リビングの家

1階和室には縁なしの琉球畳を並べて、落ち着きのあるモダンな装いに。駐車場側の掃き出し窓と隣り合う壁には地窓を設けて、明るさと風の通り道を確保しています

視界が開ける2階リビングの家

ダイニングキッチン。木目調にデザインされたナチュラルな装いが、床の風合いとよくマッチしています。通路を挟んでキッチン右手に見える扉が洗面室とバスルーム、正面奥が物干し場です。水回り動線がコンパクトにまとまっています

視界が開ける2階リビングの家

1階奥に2部屋並んだ子ども室は、同サイズ同デザイン。無駄を省いたシンプルな空間で、勉強をしたり読書をしたり、文字通りプライベートな物事に集中して取り組めそうです

■笑顔を誘う光に満ちた空間設計

 土地選びもプランニングも眺め最優先だったとはいえ、採光通風を図る機能面の工夫も目に付きます。特に2階ダイニングとキッチンは、細長い建物の奥に位置するため、フロア中央にパティオをつくり、トップライトで明るさを確保。パティオは開閉できる透明なガラス戸で囲われており、視界の妨げになりません。「初めて訪ねてきた人は必ず、通り抜けようとしてガラス戸に顔や頭をぶつけるんですよ」とご主人が苦笑いするほど、空間に溶け込んでいます。それでもトップライトからの光と床の白タイルが、LDKとは一線を画す独立したスペースであることを気高く主張しています。
 トップライト最大の敵は夏の暑さでしょう。Tさん宅では日よけにロールスクリーンを張り、エアコン運転中はガラス戸を閉めて対応しているそうです。日が落ちれば、そして夏が過ぎれば、ともに開け放しておいても何ら支障はありません。
 1階に目を移すと、玄関ホールから階段に至る廊下一帯は2階まで吹き抜けになっています。壁際のトップライトから光がさんさんと降り注ぎ、白を基調にまとめた壁と床が明るく照らされています。廊下の壁を一枚隔てた向こうには、完全に仕切られた個室が並んでいます。主寝室と2人の子ども室のほか、駐車場に面したフロア最前面には和室が置かれ、客間の役割も果たしています。
 今回の家づくりを振り返ってTさんは、一つだけ気にかけていたことがありました。上の子どもが進学するタイミングと重なり、新築後間もなく一人暮らしを始めたため、「もっと早く建てるべきだったのではないか」と。それでも昨年の夏休みには友だちを10人ほど連れて帰省し、和室とパティオに分かれて寝泊まりするなど、家中が合宿所状態に。「私も一緒になっておしゃべりをしたり、料理を振る舞ったり、楽しくにぎやかに過ごしました」と奥さま。親子ともども、新居への愛着はかえって人一倍強いものとなって、育まれているのかもしれません。

視界が開ける2階リビングの家

パティオからリビング方向を眺める。ガラス戸が透明なので、屋外の景色まで明るく見通せます。普段はダイニングとは趣の異なるテーブルを置いたり植栽を飾ったり、クリスマスシーズンには豪華なツリーセットが登場します

視界が開ける2階リビングの家

眺望抜群のテラス。左手にはシンボルツリーに見立てた鉢植えが置かれています。テラスでバーベキューを楽しんだり、台風時に屋外の危険物を保管できるように、こぢんまりとした床下収納が設置されています

敷地の与条件を素直に生かし家の個性につなげる

■街並みに映える目配りが行き届いた外観デザイン。
細長い家の奥までトップライトで効果的に採光 ―― 一級建築士・當間卓さん談

 Tさん宅の設計では、眺めを生かすことを大前提に、敷地の与条件に素直に従い計画を進めました。土地は間口が狭く奥行きのある縦に細長い形状で、傾斜地のため前面道路に沿って約2メートルの高低差がありました。まずは建築に先立ち地盤を調査したところ、支持層まで2メートルほど掘り下げる必要があったため、この深さを利用して地下室を設けることにしました。さらにリビングの開放感を高めるために、2階の天井高を上限まで延ばした結果、斜線制限の影響で屋根の半分に勾配が生まれました。このように土地のもつ潜在的な力が、建築的にもデザイン的にも特徴深い形となって自然と現れ、それがTさん宅の個性にもなりました。
 また“見晴らしがいい”ことは、逆に“外からも見られやすい”状態であることを意味します。そのため外観デザインにも気を配り、形態意匠の工夫や素材による演出に努めました。
 例えばリビングの外に突き出たテラスの脇には、シンボルツリーに見立てた特大の鉢植えを設置。ワイヤロープで厳重に固定しているので、台風の心配は要りません。テラスを覆う庇(ひさし)も外見上の印象を意識して、片持ち梁風のデザインに仕上げています。
 1階の外構には、溶融亜鉛メッキを施したスチールにレーザー加工で模様を描いた、オリジナルの門扉や表札を導入。玄関までのアプローチ沿いには、ゴーヤーなどつる性植物の栽培に適したワイヤメッシュを設置しました。また和室の屋外には、駐車場に面してFRPグレーチングを建て、緩やかに視線をコントロールしています。
 室内のプランニングでは、縦に細長い建物のため、光と風が家の奥まで行き届くように配慮しました。2階リビングの大開口から招き入れた風が、キッチン裏の水回りまで抜けていくように空気の流れをデザインし、2階中央のパティオや、吹き抜けになった壁際の階段周りにはトップライトを付けて、効果的に採光しています。

視界が開ける2階リビングの家

リビングからキッチン方向をまっすぐに望む。右手のピアノの脇に並べられた背の低いチェストは、マンション暮らしの頃から使っていた持ち込み品のサイズとデザインに合わせて造り付けたものです

視界が開ける2階リビングの家

右/吹き抜けになった階段壁面にはニッチが設けられ、県内作家の工芸作品が数多く飾られています。展示物をいつでも入れ替えられるように、脚立の足場になるレールも取り付けられています
左/玄関を上がってすぐの場所に地下室の入り口があります。2メートル弱の高さがあり、屈まずに立って作業できます。どうしても湿気がこもりやすいため、除湿設備は必須です

視界が開ける2階リビングの家

前面道路から見た外観。敷地の傾斜に沿って制限される高さが変わるため、屋根の左半分が斜めになったユニークな形状に。レーザー加工でデザインした門扉と表札はそれぞれ12ミリ、6ミリの厚みがあり、強度にも優れています

當間 卓さん

當間 卓さん

■家づくりのヒント

■周辺環境を巧みに取り込んだ“眺め心地のいい”住空間

視界が開ける2階リビングの家

周囲に建物がひしめく立地条件の中で、Tさんが求める眺望環境を用意するには、リビングを2階に置き天井高を最大限に上げ、道路側の壁を全面ガラス張りにすることが、唯一無二の回答でした。見晴らしが単に良好なだけではなく、室内と屋外の景色がスムーズにつながり、周辺環境を巧みに取り込んだ“眺め心地のいい”住空間を形成しています。

■株式会社泉設計
那覇市楚辺3-3-11 098-832-1302
http://www.izmarc.co.jp
家族構成:
夫婦、子ども2人
所 在 地 :
那覇市
設  計:
株式会社泉設計
敷地面積:
215.87㎡(65.30坪)
建築面積:
103.41㎡(31.28坪)
延床面積:
199.39㎡(60.32坪)
用途地域:
第一種低層住居専用地域
構  造:
鉄筋コンクリート造
完成時期:
2012年12月
  • 施 工 業 者
  • ●建築/株式会社仲本工業
  • ●電気/沖電水工事株式会社
  • ●水道/ヤシマ工業株式会社
  • ●キッチン/パナソニック株式会社

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