沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション
昨年11月に念願のマイホームを完成させたKさん一家は、もうすぐ新居で初めての夏を迎えます。
南側の庭一面に設けた広いデッキテラスは、バーベキューや夕涼みの場として大活躍しそうです。
ウッドデッキで広がる交流の輪
■キッチンにいても家族の様子が分かる間取りを希望
うるま市の閑静な住宅地に建つKさん宅は、夫婦とお子さまの3人暮らしです。家づくりについては「そのうちに…」と気長に構えていたというKさん夫妻ですが、ご主人の両親が所有する土地を譲り受けたことを機に、本格的に家づくりをスタートさせました。「父の『家は若いうちに建てたほうがいい』とのアドバイスも、私の背中を押してくれました」と振り返るKさん。
設計は、趣味のボーリングが縁で知り合った設計事務所へ依頼することにしました。「住宅設計の事例集を見た時、住まい手それぞれのライフスタイルに合った家づくりが提案できる、引き出しの多い設計事務所だと思いました。デザイン的にも好みでしたし、満足のいく家が建てられると思い、依頼を即決しました」と話します。
家づくりに当たって、友人の多いKさんの頭に最初に浮かんだのは、広々としたウッドデッキだったそうです。「芝庭の代わりに庭いっぱいにデッキを設置して、週末は友だちを招いてバーベキューをしたいと思いました」と言います。Kさん夫妻は、建築士に提案されたプランの中から、南側に向かって大きく開いた吹き抜けのある2階建てを採用。ウッドデッキはもちろん、奥さまの要望だった、キッチンにいても家族の気配が分かる安心感のある間取りや、家事が効率的に行える動線、充実した収納スペースなどのこだわりを実現したマイホームを完成させました。
リビング側の開口部はフルオープンできるタイプの窓を設置して、庭一面に設けたウッドデッキとの連続感をつくり出しています
白とダークブラウンで統一したリビング。吹き抜け部分の琉球ガラスがインテリアに彩りを添えています。さらに、ウッドデッキを囲むように設置された境界塀に汚れがつくと眺めが台無しになってしまうため、上部には雨水を誘導するための溝を掘っています
■室内外を連続させて開放感をつくり出す
結婚10周年の節目の年に完成したというKさん宅。坪庭を眺めながら玄関ホールを通り抜けると、吹き抜けのリビングとひと続きになったウッドデッキの大空間が広がり、心地良い開放感に包まれます。「せっかく家を建てたのに、家の中よりもここでくつろぐ時間のほうが長いんですよ」と冗談まじりに話すKさん。週末はウッドデッキに造り付けた掘りごたつ式のテーブルが、友人との語らいの場になるそうです。
その様子を正面から見渡せる位置にあるキッチンも、Kさん一家のライフスタイルに合わせて作られています。とりわけ目を引くのが、対面式キッチンに設置したカウンター。「ダイニングテーブルの代わりに作ってもらいました。必要のない時は折り畳んで、空間をすっきり見せるようにしています」と奥さまは満足そうです。
リビングの並びにあるKさんの書斎には、吹き抜け空間を生かしてロフトを確保し、さらにその下にはデスクや棚を設置しました。ロフトスペースはお子さまの格好の遊び場だそうで、Kさん宅には居心地のよさそうな場所がいくつもあります。
「無理難題を形にしてくれた建築士さんはもちろん、施工を手がけてくれた友人には感謝の気持ちでいっぱいです」と話すKさん夫妻。今後は建物の正面に配されたサービスコートを目隠しする形でルーバーを設置する予定があるそうで、Kさんの家づくりはもう少し続きそうです。
右/玄関ホール。FIX窓とジャロジー窓を組み合わせた開口部で、和風に仕立てた坪庭の眺めと風を取り込んでいます
左/トイレを含む水回りは、天窓や坪庭からも通風や採光が確保できるようにして、カラッとした状態を保ちやすくしています
折り畳み式カウンターテーブルの使用時。玄関ホールとの間にはスリット付きの壁があるので、食事中の来客も気になりません
テーブルを畳んだ時、カウンターの側面がフラットになるようデザインされています
ロフトの下に確保した書斎。右手に見えるのは水回りやキッチンにつながる廊下
子ども室は2つの部屋に仕切れるよう可動式の仕切り壁を設置しています
空間を立体的につなげて家族の交流を育む
■『浮かぶBOX』をイメージした外観デザイン ――
建築士・久田友一さん、三井康介さん談
敷地は住宅地の中にある南北に細長い宅地造成地で、3階建ての住宅が建つ東側以外は空き地となっていますが、いずれここにも家が建つことが予想されます。さらに、地盤調査の結果、改良工事が必要な状態であることが分かりました。
プランニングは、こうした敷地条件や予算、4台分の駐車スペースとウッドデッキの確保、キッチンにいながら家族の気配が伝わる間取りや太陽発電システムの導入といった施主の要望を踏まえた上で、Kさん一家らしく暮らせる空間をつくり出すために、綿密な打ち合わせを行いました。
建物の基礎は、比較的浅い掘り起こしで地盤改良が行える「コマ型基礎工法」を採用して、建築コストの削減につなげました。また、太陽光発電の発電効率を高めるため、ソーラーパネルを設置する屋根は片流れ形状にしたほか、塗装面の劣化を防ぐために高断熱性の塗装をコンクリート躯体の内側に施工してランニングコストにも配慮しています。
内部は、家の中心にあるリビングの吹き抜けで上下階をつなげたり、キッチン、リビング、ウッドデッキを一直線に配するなどして開放感を創出。家族やお客さまとのコミュニケーションが楽しめる伸びやかな造りとなっています。家事動線については、キッチンの両側から通り抜けできるようにして水回りや玄関とつなげ、料理中の急な来客にもすぐ対応したり、洗濯物や買い物帰りの重い荷物の運び入れといった作業も楽に行えるようにしました。
また、東に面した玄関、南西向きの大開口部、北西に水回りをまとめるなど、沖縄の気候風土に根差した風水も取り入れているので、自然な光と風で過ごせる健康的で快適な住空間が実現できたと思います。
外観デザインは『浮かぶBOX(箱)』をイメージしています。ただし、開口部が少なく、白い箱を組み合わせたような建物形状は圧迫感が出がちですので、外壁の一部を片持ち形状にしたり、外部にスリットやライトを効果的に用いるなどして軽快さをつくり出し、街並みになじむよう配慮しました。
吹き抜けを介して2階とつながるリビング。ここはどの空間にもアクセスがしやすく、自然に家族が集います
建物正面の中央部に配したサービスコートには、目隠し用のルーバーを設置する予定です
建物形状を利用した照明効果で夜の佇まいを演出。ちなみに片持ちになった部分の内部はシューズインクロゼットとなっています
キッチンからの眺めをイメージしたスケッチ画。縦と横の空間のつながりが、分かりやすく表現されています
■家づくりのヒント
■階段室は遊び心のある照明で演出
シーンに応じて多彩な演出ができるよう、照明計画にもこだわったKさん宅。階段室も普通の照明では物足りないということで、蹴(け)込み板にアクリルを使いました。夜は、アクリル板から透ける明かりが足元を照らします。リビングから見ると、踏み板が浮かんでいるように見え、非日常的な雰囲気をつくり出しています。
左から、建築士・久田友一さん、三井康介さん
- ■久友設計株式会社
- うるま市赤道359-1
- http://www.hisatomo-p.com
- 家族構成:
- 夫婦、子ども1人
- 所 在 地 :
- うるま市
- 設 計:
- 久友設計(株)
- 担 当:
- 久田友一、三井康介
- 敷地面積:
- 226.39㎡(68.48坪)
- 建築面積:
- 109.36㎡(33.08坪)
- 延床面積:
- 121.16㎡(36.65坪)
- 用途地域:
- 第一種低層住居専用地域
- 構 造:
- 鉄筋コンクリート壁式構造
- 完成時期:
- 2012年11月
- 施 工 業 者
- ●建築/有)三成工業
- ●電気/マサ友電設(株)
- ●水道/(有)協進
- ●キッチン/パナソニック リビング九州(株)沖縄支店
- ●太陽光/(株)太陽光システム沖縄