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沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

白壁のクールな外観が印象的なTさん宅は今年5月に完成。
那覇市の住宅密集地にありながら、外部からの視線や光、風の流れを上手にコントロールして住み心地を高めた、機能性に優れた住宅です。

視線気にせず伸び伸び住まう

視線気にせず伸び伸び住まう

■工夫一つで〝豪邸〟に

 南向きに取られたリビングの大開口から、たっぷりの光と新鮮な空気を招き入れ、室内は明るく風通し良好です。しかし前面道路から見るとファサードに窓はなく、住居スペースにあたる2階部分は一面が真っ白な壁に覆われています。
 それでも家の中が明るく感じられるのは、2階の壁の内側がテラスになっていて、光庭の役割を果たしているから。そのテラスは大開口を介してリビングとつながっており、外壁でプライバシーを守りながら、室内外が一体となった大空間を創出しています。
 こうした家の造りは、「外部からの視線を気にせず、気楽に過ごせるように」という施主のTさんの要望を踏まえてのもの。Tさん宅があるのは、周囲に民家が密集する那覇市の住宅街です。今までのアパート住まいのような気遣いを極力減らし、自由で伸びやかな暮らしをかなえるには、道行く人や近隣からの視線をコントロールしつつ、採光性と通風性を確保する必要がありました。
 開放感を高める工夫は、テラスのほかにも随所に見られます。LDKだけ天井が他のスペースより一段高く、ハイサイドライトが設けられていたり、1階の玄関ホールが2階まで吹き抜けになっていたり、家の中央に坪庭が効果的に配置されていたり。これらの仕掛けは、「金額以上に豪華に見えて、かつ寒々しい雰囲気にならないように」と要望していたTさんのイメージにもぴたりと当てはまり、「友人の間で、“豪邸”と評判なんです」と、ご主人はにんまりです。

視線気にせず伸び伸び住まう

テラスから室内全体を眺める。空の景色だけを切り取って見せてくれるハイサイドライトは、開放感を高める視覚的な効果があります

視線気にせず伸び伸び住まう

反対にホールからリビングとテラスを見渡す。開口部の窓には両開きの引き戸を設置

視線気にせず伸び伸び住まう

リビングから家の奥に向かってまっすぐに延びる廊下は風の通り道。写真手前の廊下を左に曲がると洗面室側の通路に出ます

視線気にせず伸び伸び住まう

白を基調にしたクールな外観。建物の周囲は「雑草の手入れをしなくて済むように」と砂利を敷き詰めました

■回遊できる動線計画

 Tさんの家づくりは土地取得から着工まで、約2年の月日を要しました。土地探しはお子さまが通う小学校の校区内に絞り、値ごろ感から今の土地を「衝動買い」したものの、建築設計の依頼先は時間をかけてじっくりと検討しました。最終的に選んだ決め手は、過去の作品とTさんが建てたい家のイメージが最も近かったことに加え、「生活のしやすさを意識した、緻密な動線計画に好感を持ちました」と奥さま。「建築士さんご自身が家事に積極的とあって、実際の使い勝手などを気軽に相談できたことが大きなポイントですね」と冗談交じりに振り返ります。
 出来上がった間取りを見ると、キッチンからウオークインクロゼットまで一直線に通路が貫通。どのスペースも通路の幅は一定で十分な広さがあり、移動がスムーズな上に作業性も抜群です。
 またリビングから子ども室にかけては同じように廊下が延び、最奥にある主寝室を抜けるとウオークインクロゼットとの間を行き来できるようになっています。つまりどこを通っても家の中には「突き当たり」がなく、ぐるぐる回遊できる造りになっているのです。
 こうした動線計画が奥さまたってのリクエストだとすれば、ご主人のひそかなたくらみは1階にありました。玄関の奥に回り込むと広々としたスペースが開けており、その一角にはバッティング練習用のネットが張られています。「野球に熱心に取り組む息子のために、どうしても運動できるスペースを設けたかった」とのこと。
 今回のTさん宅のプランが「プロ野球選手が育つ家」として名をはせるかどうか、ご主人ともども楽しみに見守りたいところです。

視線気にせず伸び伸び住まう

右/キッチン隣りには食品庫と室内干し場を配置。干し場は全面ジャロジー窓にして、採光と通風を図っています
左/干し場の先に続くのが洗面室と脱衣室。洗面室にはトップライトを設け、奥まったスペースの明るさを確保しています

視線気にせず伸び伸び住まう

1階は野球の練習や物置き用のフリースペースに

外部に閉じて中に開き、光と風をコントロール

■機能的な家事動線を風の通り道に。1階を暗めのトーンに抑え2階の明るさを演出―― 一級建築士・金城司さん談

 Tさん宅の設計で最もポイントになったのは、明るさと風通しの確保でした。住宅密集地である上に、前面道路を挟んで斜め向かいに5階建てのアパートがあり、ルーバーや花ブロックだけでは外部からの視線に対処できないことが明らかでした。それならいっそのこと壁で完全に閉じてしまい、設計上の工夫を凝らすことで、光と風を取り込めるようプランを作成しました。前ページで紹介のあった光庭としてのテラス、リビングの大開口の窓やハイサイドライト、室内中央の坪庭などに加え、リビングとキッチンからそれぞれ家の奥に向かってまっすぐに延びる通路は、機能的な動線としてだけではなく、室内の暗くなりがちな場所に光と風を届ける役割も果たしています。
 Tさんとの打ち合わせでは当初3パターンの図面を提示した中から、「ワンフロアで暮らしたい」「野球などの運動ができる場所がほしい」といった要望を踏まえ、生活スペースをすべて2階にまとめた現在のプランに落ち着きました。なお2階の明るさと開放感を高める演出として、玄関と階段の色合いを暗めのトーンに抑え、2階に上がったときに空に突き抜けたような印象を抱けるように工夫しています。
 このほか提案事項としては、照明の光源が直接目に入らないように、間接照明とダウンライトを多用しました。十分な照度が確保されていれば、家庭の照明はやや暗めのほうがリラックスして過ごすことができます。
 また床材にはヒノキの無垢(むく)フローリングを施工しました。チークのような南洋材と比べて軟らかく、香りを楽しむことができ、白めの樹種を求める方によく推奨しています。

視線気にせず伸び伸び住まう

右/窓を開けるとテラスとリビングが一体となって広々。テラス両側の壁には、型枠表面に杉板を張りコンクリートを打設して、杉板の模様をつけました
左/キッチンはたっぷりとした容量のシンクに3連式のコンロがついて調理しやすく、つり戸棚を省いたので視界もすっきり

視線気にせず伸び伸び住まう

右/和室などの引き戸は戸車とレールの出っ張りをなくし、天井も床もフラットに
左/階段の壁面もテラス同様、杉板の型枠で模様をつけました

金城司さん

金城司さん

■家づくりのヒント

視線気にせず伸び伸び住まう

FRPグレーチングで空気の流れをデザイン

■FRPグレーチングで空気の流れをデザイン

FRPグレーチングとは、強化プラスチックを格子状に成形した多目的資材です。軽量で強度に優れ、床板にもよく使われています。Tさん宅では和室と子ども室の窓の外に、40センチ幅のFRPグレーチングを設置。1階からの風が格子を抜けて吹き上げてくるため、Tさんの話では、窓を開けていると真夏でも寒いと感じることがあったそうです。

■門(じょう)一級建築士事務所
南風原町津嘉山750-1
098-888-2401 098-888-2404
http://www.jo1q.com/
家族構成:
夫婦、子ども3人
所 在 地 :
那覇市
設  計:
門(じょう)一級建築士事務所
敷地面積:
184.69㎡(約55.87坪)
建築面積:
110.19㎡(約33.33坪)
延床面積:
203.71㎡(約61.62坪)
用途地域:
第一種低層住居専用地域
構  造:
鉄筋コンクリートラーメン構造2階建て
完成時期:
2012年5月
  • 施 工 業 者
  • ●施工/(株)金城組
  • ●電気・水道/(株)新共電気工業
  • ●キッチン/CASA

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