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沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

昨年暮れ、南部の分譲地に完成したNさん宅は、海の眺めが見事な混構造住宅です。
農業を営み、広々とした土間敷きの玄関で野菜の苗を栽培するなど、新居での生活を楽しんでいます。

海風も涼やかな混構造の家

海風も涼やかな混構造の家

■眺望優先の土地探し

 海に向かって一本道が、住宅街を縫ってまっすぐに延びています。
 2階リビングのソファにどんと座って、その道の先に広がる海の景色を眺めることが、Nさんにとって至福の時間であり、また今回の家づくりにあたって第一に求めた空間でした。
「土地探しでは分譲地内を走り回りました。軽トラの荷台に上って、海の見え方をチェックしたり。そして将来、周辺に家が建っても海の眺めだけは絶対に確保されると分かった場所が、現在の敷地だったんです」とご主人。リビングの隣にはダイニングとキッチンが境目なく連なり、天井は高く木屋根の梁(はり)や垂木があらわになっています。こうした伸びやかな部屋の造りと、窓外の眺望が相まって、ひときわ開放感が感じられます。
 4年前に県外から沖縄へ移り住み、家づくりに取りかかったのは一昨年のことでした。農業をしていて畑が南部にあること、南部の主要な卸先近くに住んだ方が商売上も有利なこと、都会暮らしの長い奥さまや高校生の長男に、今までと近い生活環境を用意することなどを考慮すると、おのずと住む場所は限定されました。
 依頼業者はあちこち見て回った中から、「RC造が主流の沖縄で、木や赤瓦を巧みに取り入れた作風が好みに合った」という建築士事務所を選びました。しかも「沖縄に住む前に目にした雑誌で、とても気に入っていた住宅があったのですが、あとで調べてみたらそれが偶然同じ建築士さんの作品だったんです」とのこと。これを運命の出会いというのは、少々大げさでしょうか。

海風も涼やかな混構造の家

2階リビングからバルコニー越しに景色を眺める。Nさん宅は海沿いを走る住宅街の外周道路から約150メートル内陸にあります。右手ダイニングスペースの窓の外には、日よけ・遮熱用の花ブロックが見えます

海風も涼やかな混構造の家

2階バルコニーは海を望むリゾートフルな空間。数ある分譲地の中から、この“しおざきタウン”を選んだ理由について「2面道路で空間にゆとりがあり、日当たりと風通しが良い点が気に入りました」とご主人

海風も涼やかな混構造の家

2階LDKのリビング方向からの眺め。屋根の小屋組があらわになった開放的な造りで、南北の両妻側の壁には、通風と採光に有効なハイサイドライトが設置されています

海風も涼やかな混構造の家

玄関から階段を上がって2階へ。正面に見えるのが苗栽培の温室を兼ねたガラス張りの玄関ホールです

海風も涼やかな混構造の家

2階の個室は2部屋ともLDK同様に天井を張らず木屋根が見える構造になっています

■味わいが深まる家

 Nさんの新居は補強コンクリートブロック造の壁体に赤瓦葺きの木屋根を載せた、2階建ての混構造です。居室は2階のLDKのほか、上下階に2部屋ずつ、今は県外の学校へ通う長女の分も含め、家族4人分の個室があります。さらに1階にはミニキッチン付きのゲストルームがあり、時には農作物の出荷準備をする作業スペースとして、また時には修学旅行の民泊を受け入れるなど宿泊室として、大活躍しているそうです。
 玄関は広々とした土間敷きの空間で、ガラス張りの壁とトップライトから、さんさんと日が差し込みます。これはご主人が「台風など天候不順のときでも苗を育てられるように」と希望してこしらえたもの。窓際の明るい場所に苗棚を並べ、さまざまな種類の野菜を栽培しています。
 こうした間取りはすべて、Nさんの要望を受けた建築士が最初に提案したプランのままです。「手描きのラフスケッチがとても気に入り、ほぼ希望通りの家になるだろうとイメージできたので」とご主人は振り返ります。
 新居は昨年暮れに完成し、春先には奥さまと長男も引っ越してきました。2人とも「今までの家より広くて明るくて開放的」と住み心地は上々の様子です。ご主人は「住んでまだ半年なのにすっかりなじんで、もう5年以上いるような感覚です」と印象を語り、「私たちが年を取るのと歩調を合わせるように、味わいが深まりいい家になっていくだろう、そんなイメージを抱かせてくれる家ですね」と穏やかに話しています。

海風も涼やかな混構造の家

個室は現在、2階をご夫妻、1階を子どもたちが使用。高校生の長男は新居の環境について「ほとんどの用事は自転車で行って済ますことができて便利」とのこと

家族の個室とは別にゲストルームとして設けた部屋は、多目的な用途に役立っています

コンクリートの壁体に木の屋根を載せた混構造の家づくり

■赤瓦、花ブロックで沖縄の風土を演出。2階リビングで海の眺望を生かす ――
一級建築士・山城東雄さん談

 私たち東設計工房では、沖縄の風土に根差した建築を目指し、コンクリートの躯体と赤瓦葺きの木屋根を組み合わせた混構造住宅の設計を、30年以上手がけてきました。壁は台風に備えて頑丈に造り、屋根は木造にして暑い日差しによる輻射熱を緩和します。また赤瓦はもともと断熱に適した屋根材ですが、内側の空気層に対流を起こして熱を逃がすように工夫することで、さらに断熱効果を高めています。
 Nさん宅の設計では「海の眺望を生かしたい」との要望を重視して、見晴らしの良い2階に生活スペースとなるLDKを配置しました。リビングには東西両面にバルコニーを配し、風通しの良いオープンな造りにしています。ダイニングとキッチンは光と風を取り入れつつ西日の影響を考慮して、西面の壁に花ブロックを設置しました。通りから家を見上げると、花ブロックの模様と屋根の赤瓦がマッチして、モダンな装いの中にも沖縄らしさが感じられます。
 床は杉板の無垢(むく)フローリングを施工し、戸棚やカウンターの多くは造り付けにしました。同じく造り付けのダイニングテーブルは、3つのパーツの組み合わせ方を変えることで、大人数にも対応できます。またキッチンのすぐ隣に半屋外の干し場を並べるなど、コンパクトにまとめた家事動線もポイントです。
 そのほかの居室については「5つの個室をつくりたい」とのリクエストがあり、限られた面積の中で全室角部屋になるようにレイアウトを決めました。2階の個室とリビングの間には広めのホールを設け、公私の空間をつなぐ中間領域として自由に活用できるようにしています。

海風も涼やかな混構造の家

普段は写真のようにダイニングテーブルを長方形にして使用していますが、3つのパーツを縦につなげると、5メートルほどのまっすぐなテーブルに早変わりします

海風も涼やかな混構造の家

赤瓦と花ブロックが印象的な外観。屋根のえんじ色と漆喰の白が青空に映えます。躯体は予算を抑えるために、鉄筋コンクリートではなく補強コンクリートブロックを使用しました

海風も涼やかな混構造の家

右/子ども室とリビングの中間にある2階ホール。現在は造り付けの本棚の前にソファを置いて、ちょっとした息抜きスペースにしています
左/2階リビングには海の反対側にもバルコニーがあり、家の南端にいす一つ分ほど突き出たスペースからは同様に海を望むことができます

山城東雄さん

山城東雄さん

■家づくりのヒント

■ガラス張り・土間コンクリートで作業効率を最優先した玄関周りに

海風も涼やかな混構造の家

農業を営むNさん宅の玄関は、苗の栽培と出荷作業に適した造りになっています。壁と天井はガラス張りで明るく暖かく、床は作業性を重視して土間コンクリートを敷いています。駐車場に車をつければ、ここで育てた苗をすぐに荷台に詰め込むことができます。またゲストルームには駐車場側に縁台があり、いろいろな荷物を積み降ろしする際に役立っています。

■株式会社東設計工房
浦添市伊祖1-4-12 098-877-1962
http://www.azumas.com/
家族構成:
夫婦、子ども1人
所 在 地 :
糸満市
設計監理:
株式会社東設計工房(代表・山城東雄)
敷地面積:
約195.00㎡(約58.99坪)
建築面積:
約92.24㎡(約27.90坪)
延床面積:
約167.04㎡(約50.53坪)
用途地域:
第二種低層住居専用地域
構  造:
混構造(補強コンクリートブロック造+木造)
完成時期:
2012年12月
  • 施 工 業 者
  • ●建築/株式会社金城組

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