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沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

久米島の新興住宅地に建つ山里さん宅は可変性のある間取りや回遊動線を取り入れ、将来にわたって空間を合理的に使えるようにしました。
久米島の自然を感じながら子育てが楽しめる開放的な住まいです。

自然の中で育む家族の時間

自然の中で育む家族の時間

■妥協のない家づくりを目指して設計事務所を選択

 沖縄本島から飛行機で約30分の距離にあり、エメラルドグリーンの海と起伏に富んだ地形がもたらす自然が魅力の久米島。山里さん夫妻が、ご主人の生まれ育ったこの島に家を建てたのは今から2年ほど前のこと。現在は夫妻と小学2年生、4歳、2歳のお子さまの5人家族で伸び伸びと暮らしています。
 以前は島内でアパート暮らしをしていたという山里さん一家。「私が本土から久米島に嫁いだこともあって、県外在住で田舎暮らしにあこがれていた今は亡き父が、2区画分の島の土地を購入して私たちに譲ってくれたんです」と奥さまが言うように、思いもよらぬ形で土地を取得。長女の小学校入学をめどに家づくりを計画し、住宅資金をこつこつ貯めながらインターネットや住宅情報紙などで情報を収集したと言います。
 久米島での家づくりは、地元の建設会社や本土のハウスメーカーに設計を依頼するのが一般的だそうですが、山里さん夫妻は「感性の合う建築士と一緒に、イメージ通りの家を建てたい」と、自らインターネットで探し当てた沖縄本島に拠点を構える設計事務所へ設計を依頼しました。
「離島での家づくりは、資材の輸送費などでコストが割高になりがちですが、建築士さんから、できることとできないことをはっきり示していただいたこともあり、妥協せずに家づくりに取り組むことができました。また、質問などにも丁寧に対応してくれたおかげで、距離のハンディを感じることなく、思い通りの家が建ちました」と山里さん夫妻は満足そうに話します。

自然の中で育む家族の時間

ウッドテラスにハンモックやテーブルを置いて生活空間の延長として使用。子どもたちの遊び場になったり、来客時はここでバーベキューをしたりとフル活用しているそうです

自然の中で育む家族の時間

本土から遊びに来る奥さまのお母さまが宿泊する和室は、ほかの居室と程よい距離感が保てる場所に配置。気兼ねなくくつろげるようにしました。また、空間をすっきり使えるよう、つり下げ式の収納棚の下に滞在中の荷物を置けるようにしています

自然の中で育む家族の時間

LDKと子ども室、ウッドテラスのつながりを見る。天井高まである開口部にフルオープンタイプの窓を設置して開放感を強調しています

自然の中で育む家族の時間

トップライトから光が差し込む明るいキッチン。家事動線がよりコンパクトになるよう、キッチンの背面から水回りへ直接行き来できるようにしました

自然の中で育む家族の時間

洗面室にもトップライトを設置。洗面台の隣にはタオルなどを収納するオープン棚とカウンターを造り付けました

■2区画分の土地をつなげて庭のある暮らしを楽しむ

 白を基調にしたモダンな佇まいが目を引く山里さん宅。内部はコンクリート打ち放しと木部を組み合わせてナチュラルな雰囲気にまとめ、間取りは「将来にわたって空間を無駄なく使いたい」という要望に応えて、子ども室の仕切り方ひとつで、今は2LDKとして使っている空間を、3DKや4LDKに変えられるようにしました。「家が完成した後に末っ子が生まれたので、これは大正解でしたね」と山里さん夫妻はにこやかに話します。
 深い軒下にあるウッドテラスをLDKや子ども室とつなげて大空間を創出し、ウッドテラスや庭はもちろん、家全体が見渡せる場所にキッチンを配置。「料理や家事をこなしながら子どもたちに目配りができる上に海まで見えるんですよ」と奥さまはご満悦です。キッチンから洗面室、物干し場を回遊動線でつなげて家事動線をコンパクトにまとめたほか、ウオークインクロゼットや床下収納といった収納スペースもふんだんに確保されているので、お子さまの成長に伴い増えてくる荷物の置き場所に困ることはなさそうです。
「義父にもこの家でのんびり過ごしてもらいたかったですね」と静かに語るご主人は、2区画分の土地をスロープでつなげて作った庭の手入れもこなします。家庭菜園で収穫したトマトやオクラ、ピーマンなどが食卓に並ぶこともあるそうで、奥さまのお父さまがこよなく愛したという久米島の自然が、山里さん一家の暮らしをより豊かなものにしていました。

自然の中で育む家族の時間

明るく風通しが良いおかげでエアコンなしでも快適。隣家との間に段差と距離があるため、LDKの窓を開放したままでも視線は全く気になりません

自然の中で育む家族の時間

収納式扉を閉めると、現在LDKとひと続きにして使っている子ども室は完全な個室になります

自然の中で育む家族の時間

施主・設計・施工の3者のコミュニケーションを円滑にする

■逆スラブ工法を採用し開放感を創出 ―― 建築士・城間聡さん、西村修さん談

 敷地はひな壇状に造成された住宅地の2区画を上下に並べる形で配されています。そのうちの南側に当たる下段は当面建設予定がないことから、山里さん宅のプランは南側に開いた平屋がふさわしいと考えました。
 通常のラーメン構造は梁の上にスラブが載りますが、山里さん宅はスラブを梁の下側にした「逆スラブ工法」を採用しました。この工法は柱や梁の凹凸がほとんど室内に出ないので、空間がすっきりし、天井面もフラットになるため、開口部は天井高まで取ることができました。大きく開口した南側に対し、西側に当たる道路面はプライバシーを守るために閉じ、室内が暗くならないように洗面室やキッチンはトップライト、トイレは光庭で採光して自然な光と風で過ごせるようにしています。
 今回は海を隔てた現場であることが不利にならないよう、私たちが常に心掛けている「施主・設計・施工の3者の円滑なコミュニケーション」を特に意識して、こまめに連絡を取り合いながら家づくりのお手伝いをさせていただきました。住み心地に満足しているとの感想をいただきうれしく思っています。

自然の中で育む家族の時間

山里さん宅の模型。道路とのつながりや段差なども分かりやすく表現されています
写真提供・Arms DESIGN

自然の中で育む家族の時間

建物正面に当たる西側はFIX窓やスリットで通風採光。手前のスペースは駐車場です

自然の中で育む家族の時間

南側の敷地との段差をスロープで解消して芝庭を確保

■家族全員に喜ばれる家づくりが目標 工事担当・古堅宗安さん談

 私たちは久米島で建築工事業を営んで約30年になりますが、山里さん宅で採用された逆スラブ工法や天井高まである建具、床下収納は今まで手掛けたことがないため、施工に際しては図面を見ながら建築士に確認の連絡を取るなどして慎重に進めました。
 子ども室の建具を全て収納できるようにして、子ども室をリビングの延長として使えるようにしたり、屋根付きのウッドテラスをリビングに隣接して実際の面積以上の開放感をつくり出すということは図面上では理解していましたが、実際に住んでいる様子を見てその効果を実感。南側の大開口部からは入港するフェリーの姿が望め、伸び伸びと暮らせるいい家だと思いました。家づくりは施主にとって一世一代の大事業。家族全員に喜ばれる家を建てることを目標にしている私たちにとって、初めて経験する工法が盛り込まれた山里さん宅の工事はむしろやり甲斐があり、楽しく進めさせていただきました。

古堅宗安さん

古堅宗安さん

城間聡さん(左)、西村修さん

城間聡さん(左)、西村修さん

■家づくりのヒント

■床下空間を収納スペースとして有効活用

自然の中で育む家族の時間

地盤面から約1・5メートル下の比較的浅いところに支持層があるという条件を生かし、地盤面を掘り下げて建物の荷重を支持層で直接支える「直接基礎」を採用し、掘り下げることによって生まれた空間を床下収納のスペースとして活用できるようにしています。約20畳の広さがある床下空間は、クリスマスツリーや旅行用のスーツケースといった普段使わない大きな荷物や、ご主人の釣り道具を置いても余裕があります。また床下スペース内の使い勝手をよくするために出入り口を3カ所設けています。

■ArmsDESIGN(アームスデザイン)
宜野湾市大山2-28-20 098-988-4242
http://www.arms-okinawa.com
県内、県外、国外にて建築関係の仕事に従事後、
2003年にArmsDESIGNを共同設立。
住宅、店舗等の新築、リノベーションなどを行う。
家族構成:
夫婦、子ども3人
所 在 地 :
久米島町
設  計:
Arms DESIGN
敷地面積:
269.57㎡(81.54坪)
建築面積:
129.67㎡(39.22坪)
延床面積:
126.19㎡(38.17坪)
用途地域:
都市計画区域外
構  造:
鉄筋コンクリートラーメン構造
完成時期:
2011年10月
  • 施 工 業 者
  • ●建築/古堅住設(担当・古堅宗一 古堅宗安)
  • ●水道/古堅住設(担当・古堅宗幸)
  • ●電気/球美電気工事社(担当・喜久里郁夫)
  • ●キッチン・カーテン/(有)ファイン(担当・比嘉美奈子)
  • ●鋼製建具/(有)二和サッシ(担当・田場直志)

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