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沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

七人の子どもに恵まれ、にぎやかな毎日を送る松川さん夫妻。
先祖を敬う家風と子どもたち個人を尊重する親心から家族団らんの場と個室を組み合わせ、大家族ならではの住まいを誕生させました。

9人家族1つ屋根の下

9人家族1つ屋根の下

■子どもたちも家づくりに参加

 浦添市の住宅街から少し外れた緑豊かな環境。急斜面から突き出るように、コンクリート打ち放しの家が建っています。あるじは市内で設計事務所を経営する松川さん。成長期にある七人のお子さんたちを中心とした家族の結び付きをテーマに、つい先ごろ完成させた自邸です。
 家づくりの第一歩は、約八年前にさかのぼります。客座用の床柱を調達するために、当時まだ高校生や中学生だった四人の息子さんたちを引き連れ故郷宮古島へ渡り、実家の裏山に植えてあった樹齢約八十年のヤラブ(和名=テリハボク)を伐採しました。「曽祖父の時代は農具を作るために、多くの農家が貴重な樹木として育てたようです。これは、三本残っているうちの一本を分けてもらったもの。息子たちは受験を控えていましたが、大きな木を切り倒して皮をはぐなど一生懸命手伝ってくれました」と松川さんは振り返ります。
 土地は、浦添市内の程よい広さの自然に囲まれた場所を探していましたが、巡り合った土地には急傾斜に加えて旗竿状という難条件がありました。しかしそこは、建築士として長年経験を積み上げてきた松川さんのこと、すぐさま家のイメージが浮かんだと言います。「約四百五十坪の十分な広さと緑の多い静かな環境。ご近所もいい方ばかりですし、家を建てるには申し分ない場所だと思いました」と利点を見いだしたのでした。

9人家族1つ屋根の下

開放的な家族用の居間。庭に向かってウッドデッキを設置しています

9人家族1つ屋根の下

居間と対面する形で配置されたキッチン

9人家族1つ屋根の下

キッチン隣の学習室。右の壁は取り外し可能

9人家族1つ屋根の下

悠然と構えるヤラブの床柱が印象的な和室。窓枠は赤い色に焼き付け塗装を施し、丸窓風にデザイン

■家族の時間を大切に

 奥さまや子どもたちの要望をすべて受け入れ完成させた住まいは、地階に駐車スペースと音楽スタジオ、一階に居住スペースを設けた鉄筋コンクリート造平屋建てです。「悪いなと思いながらも、遠慮なく何度も意見を言わせてもらいました」と奥さまはにっこり。
 内部は、トップライトやスリット窓から巧みに光を取り込み、コンクリート打ち放しの質感を用いたシンプルな仕上げ。間取りは、言うまでもなく大家族仕様です。「お正月やお盆も大勢の人が集まってくれますし、子どもたちの結婚式はもちろん私たちの葬式まで、冠婚葬祭すべてをこの家で行うつもりで計画しましたから、客間は広めにしました」。
 来客用の長型十二畳間の和室と居間は、借景を取り込むように北東側を大きく開口、室内と一続きにウッドデッキを設置しました。和室には、原木の造形美を生かしたあのヤラブの木の床柱を飾り、威風堂々とした和の空間をつくり出しています。
 家族団らんのスペースは、客間との間に坪庭を挟んで適度な距離感を確保。リビングを中心に子ども室や寝室などの個室を、全部で七部屋を配置しました。「家族で時間を共有することが大事」との信条から、これだけの部屋数を備えながらもテレビは家族用の居間に一台と決めています。また、キッチンの隣には、絵本や図鑑をずらっと並べた学習室があり、さらにその隣には二畳ほどの小さな集中室を設けています。家族間のコミュニケーションだけでなく、個人の時間もしっかり尊重する。そんな松川夫妻の教育方針がうかがえる配置となっています。
 奥さまが最もこだわったという生活動線も、リビングを中心に回遊できるようになっており、子どもたちがそれぞれの部屋で過ごしていても、気配や声が伝わりやすく安心感があるのだとか。「一日の終わりには家族そろって家でくつろぐ。忙しい時こそ、この時間を大切にしたいですね」と奥さまは静かに語ってくださいました。

9人家族1つ屋根の下

和室に連なった来客用の居間。黒を基調に落ち着いた雰囲気にまとめています

9人家族1つ屋根の下

右/坪庭はプライベート空間と客間との緩衝帯の役割も
左/2カ所あるトイレの一つ。床の色は娘さんが選びました

敷地形状生かし難条件を克服

■建物に凹凸を付け通風・採光を得る ―― 建築士・松川秀樹さん談

 旗竿状の敷地の西側にはアパートが建ち、北東に傾斜する一帯は山の緑や空が広がっています。まず、敷地形状に沿って約五メートル高の擁壁を建て、ひな壇状に整地。低い位置に、鉄筋コンクリート造の地階車庫と家庭菜園を確保し、平屋の居住スペースを車庫上に建てました。前面道路から緩やかな下り坂のカーブを描いて車庫へ入り、内階段から室内に至るという効率的な動線に対して、門扉から玄関までのアプローチは、庭や景色を望みながら玄関にたどり着くまでを楽しむ遊びの動線としました。仕事から帰って気持ちを切り替えるのにちょうどいい距離だと思います。  隣接する建物がほとんどない、比較的広い敷地に平屋を建てるわけですから、配置計画はプライベートと来客の動線ができるだけ重ならないよう配慮したくらいで、あとは自由に進めることができました。家内の要望をすべて反映できたと思います。
 建物にはできるだけ凹凸を付け、外気に触れる開口部を増やしました。居間とゲストルームは、天井高を約四メートル上げハイサイドライトを設置。変化に富んだ建物形状が通風・採光を確保するとともに、外観デザインをかたち作っています。さらに、開口部の断熱・防犯対策として、窓はすべてペアガラス(ピュアクール)を採用。通常より割高になりますが、敷地形状を生かした計画で基礎工事費用を抑え、内部仕上げをシンプルにするなど、コストバランスを図りました。内装はコンクリート打ち放しをベースに、赤と青をポイントとして組み合わせています。

9人家族1つ屋根の下

駐車場入り口から見た松川さん宅外観

9人家族1つ屋根の下

長い廊下はスリットやフィックス窓で効率良く採光

9人家族1つ屋根の下

家族の繁栄と絆(きずな)を願いデザインしたという三連ヒンプン

9人家族1つ屋根の下

客間用居間と連続して設置したウッドデッキをステージにコンサートを開く日も近い!

松川秀樹さん

松川秀樹さん

■家づくりのヒント

■家事動線がコンパクトに。隣人に感謝

9人家族1つ屋根の下

西側のキッチンから地下車庫を抜け、公道に出るまでの距離は約120mあります。ここで問題となるのがごみ出しです。家事動線はできるだけコンパクトに効率良くいきたいもの。それに、大家族ともなればその量は両手に余ります。毎回一輪車でごみを運び出すしかないのかとあきらめかけたとき、隣接するアパート兼住宅の大家さん上地ご夫妻のご厚意により、隣の敷地を通り抜けてごみ出しができるように。境界塀の一部を取り壊してサービスヤードとつなげ、公道までの距離を20mほどに短縮。松川さん一家は、隣人に対して心から感謝するとともに、地域社会とかかわり合いながら暮らすことの大切さを実感したそうです。

■松川秀樹(まつかわひでき)
1958年 宮古島生まれ
1983年 一級建築士免許取得(25歳)
1990年 (株)まつけん設計設立(27歳)
2009年現在までの設計業務件数1500超
浦添市字西原1-4-16 098(878)8955
家族構成:
夫婦、子ども7人
所 在 地 :
浦添市
設計・監理:
(株)まつけん設計
敷地面積:
1,487㎡(450坪)
建築面積:
281㎡(85坪)
延床面積:
417㎡(126坪)
うち住居241㎡ 駐車場176㎡
用途地域:
第1種低層住居地域
構  造:
RC壁式構造
完成時期:
2009年3月
  • 施 工 業 者
  • ●建築/チームスペック
  • ●水道/(有)丸栄電気水道
  • ●電気/(有)デンコ
  • ●キッチン/クリナップ

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