沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション
隣接するご主人の実家と庭を介してつながるという安心感に包まれた宮城さん宅には、共働き夫婦と6歳と6歳の息子さんが暮らしています。自然豊かな環境の中で子育てを楽しみ、家事を快適にこなすための工夫が随所に凝らされた、明るく開放的な住まいです。
庭でつながる親子の家
■約20軒の住宅を訪問して独自で情報収集
名護市街地の外れに位置する緑豊かな集落。築40年以上とおぼしきセメント瓦葺きの家が点在する、のどかな景色の中に宮城さん宅はあります。
以前は、建物の管理を兼ねて教会の一角に住んでいたという宮城さん一家。「結婚当初から家づくりを計画していたので、そこで4年ほど暮らして居住費を節約しました。四畳二間続きのこぢんまりとした居心地のいい空間でしたけどね」と話します。そしていよいよ実家の隣にマイホームを建てることになった宮城さん夫妻は、建築士探しをスタート。その方法とは、目に留まった家を見つけては、家の人から直接話を聞くというものでした。「そのほうが感性の合う建築士さんに出会えると、家を建てたばかりの職場の先輩からアドバイスをもらいました」と、約20軒の住宅を訪問したかいあって住まいのイメージも固まり、家づくりのパートナーである建築士を決めることができました。
家づくりに当たってこだわったのは、家事のしやすい動線であることや自然素材を使用した内装仕上げ、医療施設で導入されている水栓を使用することなど、細部にまでおよんだそうです。「建築士さんは、常に私たちのイメージ以上の提案をしてくださいました。例えば、当初はフラットな和室を考えていましたが、提案されて28センチほどの段差を付けました。腰掛けたり、登り降りするのにちょうどいい高さなのでとても重宝しています」と宮城さん夫妻は言います。
玄関。照明付きのニッチに置いた、宮城さん一家のラッキーアイテム「カエル君」がお出迎え
■居心地が良く家事のしやすい空間づくり
庭を介して隣の実家と緩やかにつながる宮城さん宅は、鉄筋コンクリート造の平屋建て。室内は漆喰で仕上げられ、「通風採光は抜群。夏も思いのほか涼しくて、エアコンは設置していません」との言葉にも納得の居心地の良さです。とりわけ、家族団らんのスペースであるリビングは天井が高くて開放的。庭に向かって設置した全開口タイプのサッシと、その先に設けたウッドデッキが空間の伸びやかさを強調しています。
子ども室と寝室は、リビングから一直線に続く廊下沿いに配置。居室をできるだけ広く取るためにクロゼットや書斎コーナーは廊下側に設けて、デッドスペースになりがちな空間を有効利用しています。キッチンの収納は、生活感が表に出にくくするために、すべて造り付けです。その後方にはサービスヤード、洗面室、脱衣室を並列してコンパクトな家事動線を実現。「サービスヤードの花ブロックは建築士さんに勧められて設置しました。おかげで洗濯物の乾きが早いですね」と奥さまは、その使い勝手の良さを実感しています。
「近くの海や川へ息子たちを連れて行くこともあります。私が幼少期に遊んだ場所なので、遊び方はもちろん、危険なこともしっかり教えてあげられるのがうれしいですね」と宮城さん。自然に囲まれた新しい住まいは、そこで暮らす家族の絆を深め、暮らしをより豊かなものにしています。
リビングでくつろぐ宮城さん一家。並びの和室には段差を利用して畳下収納を設けています
リビング、ダイニング、キッチンのつながりを見る。ハイサイドライトから光が入るので、普段、昼間は照明なしで過ごすそうです
キッチンの家電ボードや食器棚も造り付け。奥へ行くと洗面室に突き当たり、その右側には脱衣室と浴室、左側にはサービスヤードが配されています
室の出窓は天板を低くして、本棚や飾り棚として使えるようにしています。グッドアイデア!
バスコート(浴室専用の坪庭)の飾り付けは、ご主人と息子さんたちの共同制作。ご主人は、浴室の照明を消して湯に浸かりながらバスコートを眺めるのが最高だとか
子ども室でポーズを決める息子さんたち。鴨居の上に板を渡して棚を設けています。遊ばなくなったオモチャはここに飾るとよさそう
立地条件を生かした通風採光に有利な空間
■集落の景色になじむよう建物の高さを工夫 ―― 建築士・又吉光男さん談
敷地は、施主のお父さまが農地として使っていたため、農地転用申請を行い、深さ約1.5メートルの土を入れ替えて地盤を改良しました。計画に当たっては、施主の要望を踏まえつつ、台形状をした敷地と隣の実家との間にある約40センチの高低差を生かして、庭を介して実家と緩やかにつながるプランを検討。豊かな緑に囲まれ、南東に開いた立地条件を最大限に活用し、通風採光に有利な居住性の高い空間づくりを追求しました。
リビングは天井高を約3.7メートルと他の居室より高くして、両側にハイサイドライトを設けたほか、東南側の庭に面した開口部にはフルオープンできるサッシを取り付けて、屋内外に連続感をつくり出しました。リビングの屋根を高くしたことで外観に圧迫感が出ないよう、道路側に配したサービスヤードの屋根は約2.2メートルと低く抑えて集落の景色になじませています。なお、このサービスヤードを含む洗面室、脱衣室などの水回りは、西日の緩衝帯としての役割を持たせつつキッチンから行き来がしやすい配置となっており、「家事効率の良いプランを」という施主の要望に応えられたと思います。
収納計画については、大容量のシューズクロゼットとウオークインクロゼットはもちろん、リビングの隣の和室には畳下収納、脱衣室には壁一面の収納棚を設けるなど、“適量適所”の収納を確保しました。
そのほか、家族の健康を気遣う施主の要望もあって、内装仕上げは調湿機能に優れ、シックハウスの原因となるホルムアルデヒドを吸着し分解するといわれる県産の漆喰を使用。ただし子ども室の壁は、掲示物やフックなどが手軽に取り付けられるよう、一部を板壁にしています。
宮城さん一家は、お会いした時から明確な住まいのイメージをお持ちで、間取りやデザイン、素材ひとつにもこだわりがあり、打ち合わせには必ず夫婦あるいは家族でお越しになっていたのが印象に残っています。これからも、この家で末永く幸せに暮らしていただけたらと思います。
庭に面したリビングの窓をフルオープンにすれば、ウッドデッキとひと続きになり開放感が強調されます。写真左手に見えるのは廊下です
廊下の奥に配したウオークインクロゼットと書斎コーナー。リビングから見える位置にあるため手前に引き戸を設置
日差しと風を取り込むために、サービスヤードには花ブロックとトップライトを設置しました
シューズクロゼットは家族専用の玄関として使います。奥にはホールに抜けるドアがあります
外観は白を基調にしたシャープな雰囲気。奥に見えるのがご主人の実家です
建築士・又吉光男さん、又吉早苗さん
■家づくりのヒント
■パブリックな洗面室、プライベートな脱衣室
洗面室と脱衣室を分離して、入浴中の洗面室の使用にも配慮しました。脱衣室には、扉付き収納のほかにも、洗濯物を畳んだりアイロンをかけるのに便利な作業台があります。一方の洗面室は、リビング側から見える位置にあるので、洗面台の側面にカーブを付けるなどしてデザイン性にもこだわって仕上げています。衛生面を考慮したご主人たっての要望で、センサーに手をかざすだけで給水できる水栓を設置したほか、洗面台の隣には奥さまのためのメイクコーナーを確保しており、デザイン性と機能性を両立させた造りとなっています。
- ■(有)結設計
- 名護市大北5-1-23
- http://www.yuisekkei.jimdo.com
- 家族構成:
- 夫妻、子ども2人
- 所 在 地 :
- 名護市
- 設 計:
- (有)結設計 担当者/又吉
- 敷地面積:
- 557 ㎡(168 坪)
- 建築面積:
- 151.82㎡(46 坪)
- 延床面積:
- 119.32㎡(36 坪)
- 用途地域:
- 未指定地域
- 構 造:
- 壁式鉄筋コンクリート造
- 完成時期:
- 2010年12月
- 施 工 業 者
- ●建築/(有)山口建設
- ●電気・水道/創電水プラン