沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション
生活に便利な人気エリアに建つHさん宅は、ハイスペックな住宅設備を採用したほか、夏は涼しく冬、暖かい快適な住環境を実現。
付加価値の高い賃貸スペースを備えた4階建ての住まいです。
賃貸スペースのある家で 穏やかな毎日
■祖父母の遺した土地に賃貸を併設した住宅を計画
土地区画整理事業によって新しい街並みを形成しつつある那覇市の市街地に“カーサ・ディノンニ”という個性的な名前のアパートがあります。「イタリア語で“祖父母の家”という意味です。この土地は私の両親、つまり息子の祖父母が遺してくれた土地なので、息子が感謝を込めてこの名前にしました」と説明するのは、このアパートのオーナーであるHさんのお母さま。当初は平屋建てを考えていたそうですが、モノレールの駅や小学校、大型商業施設などが隣接する恵まれた立地条件に着目した建築会社の勧めもあって、住宅兼賃貸アパートに変更したといいます。
家づくりのパートナーは、Hさんの高校時代からの友人が社長を務める建設会社です。母親から家づくりを任されたHさんは、当時仕事の関係で沖縄を離れていたため、普段はメールや電話を使って打ち合わせを行い、必要に応じて帰沖して対応したそうです。「社長さんと息子は気心の知れた仲ですが、仕事となるとお互いプレッシャーがあったようです」とお母さまは話します。
遠隔地でのやりとりを難なくこなし、プランニング自体は順調に進みましたが、土地が区画整理地域にあるため申請書類が多く、建築許可が下りるまでに思いのほか時間がかかってしまいました。しかし、ある理由から竣工日を延ばすわけにもいかず、建設会社の社員一丸となって工期を死守し、鉄筋コンクリート4階建ての住宅兼アパートを完成させました。
キッチンと収能力のある食器棚は、高級感のあるパネルを採用してモダンテイストで統一しました
■コンパクトながらも使いやすく居心地の良い空間
1階はピロティ式の駐車場、3・4階は賃貸とし、2階に住居を構えたHさん宅。グリーンをアクセントカラーにした洋風な建物を色とりどりの花々で飾り、入居者や通行人を楽しませています。お母さまが暮らす2階の住居スペースは、LDKと両隣の部屋をひと続きに使えるようにしたほか、来客用の寝具を収める押し入れや、仏壇の置き場所も確保。限られたスペースを有効に使って「法事の時に接待がしやすいワンルーム空間と、十分な収納スペースが欲しい」という要望に応えました。「設計図を見てもピンと来なかったけれど、実際に住んでみると、使いやすさと居心地の良さを両立した空間だということが分かります。キッチンや水回り設備の使い心地もとても良いです」と満足そうです。
もてなし上手なお母さまは、友人を招いてのティータイムも楽しみのひとつ。カーテンを開ければ窓の外には空が広がり、丹精して育てたベランダの花々が目に入ってきます。カフェでくつろいでいるような感覚に包まれながら、お母さまは「実は竣工日は、ちょうど私の誕生日。息子がこの家を私の誕生日にプレンゼントするために、竣工日にこだわったんです。私だけが当日まで知らなくて、鍵を受け取りながらそのことを知ったときは感無量でした」と振り返ります。
「家づくりに関わった人たちの思いが詰まった家ですから、大切に住むつもりです」と感謝の気持ちを話していました。
室内は床材の白と建具のダークブラウンのシックな組み合わせ。シーンに応じて間取りに変化が付けられるよう、可動式間仕切りが設置されています
洗面脱衣室側から見た玄関ホール。左手に見えるのが収納扉で、右手のドアを開けるとリビングへ続きます
ゆったりサイズの浴槽を備えたユニットバス。賃貸スペースにも同様のグレードのものを導入しているそうです
お母さまのご希望でトイレはピンクで統一し、安らげる空間に仕上げました
入居率よりも定着率を重視した収益物件を提案
■総合工程表に基づいて施工管理体制を強化する ―― 工事担当・屋良朝彦さん談
Hさん宅の敷地は、交通の便がよく、買い物や通学に便利な人気エリアにありますので、私たちはこの立地の好条件を生かして「入居率よりも定着率を重視」したコンパクトな4階建ての住宅兼賃貸アパートを提案。将来設計を踏まえつつ、月々のローン返済額と家賃収入との兼ね合いを図って収支バランスを検討したほか、市場リサーチはもちろん、工事費や諸手続きにかかる費用をすべて算出。最初の段階で家を建てるのにどれくらいの費用がかかるのかを明確に提示しました。
計画に当たっては、約40坪の敷地に「ずっと住み続けたい」と思えるような住環境をつくり出すことを第一に考えました。居室、賃貸スペースともに、キッチンや水回り、食器棚、靴箱、収納などの設備はハイスペックなものを採用。1階にはオートロック式のドアを設置して、全世帯の防犯性を高めています。開口計画では、隣家と前面道路、方角などを考慮して通風採光や視線の抜けを確保。さらに、鉄筋コンクリート造の躯体の天井と壁に断熱材を施工しているので、夏は涼しく冬は暖かい室内環境がつくり出せたと思います。
そのほか、賃貸部分は幅広いニーズに合うよう、各世帯それぞれに異なる間取りや内装デザインを施すなどして、定着率を高める工夫をしています。外観については周囲の建物とかぶらない配色やデザインを心掛けました。ちなみに2戸の賃貸物件は、工事中に8組のキャンセル待ちが出るほどの好評を得ることができました。
わずか4カ月という工期を守れたのは、家づくりの全工程を視覚化した「総合工程表」に基づいて、銀行融資のサポートや施工管理体制を強化したこと。また、施主とお母さまに満足してもらえるよう、社員一丸となって家づくりに取り組んだ結果だと考えています。
引き渡しの際は、私たちの感謝の気持ちを込めて、お母さまをイメージした絵をプロに描いてもらいプレゼントさせていただきました。今回久しぶりにHさん宅にお伺いし、その絵がLDKに飾られているのを見て大変うれしく思いました。
リビングの大きな窓は、プライバシーや通風採光を考慮して、視線を遮る建物がない南東側に確保し、窓の先にはガーデニングが楽しめるベランダを設けています
和室は大人数の来客にも対応できるよう、手持ちの家具や仏壇を置くためのスペースを確保したほか、リビングとの段差をなくして広く使えるようにしています
大木をイメージしたという外観。基調色のクリーム色にダークブラウンとグリーンを効かせ「都会の中のオアシス」のような雰囲気をつくり出しています
右から、設計の赤嶺さん、施工管理の屋良さん、営業の修行さん
■家づくりのヒント
■玄関の機能性を高めてより快適に
キッチンや水回り設備と同じ国内メーカーに特注した靴箱は、靴以外のものもたくさん収納できるよう可動式の天板を多めに設置。扉面はキッチンと同じシックな色合いで統一して、扉をゆっくり閉じるための金具「ソフトクローズダンパー」を取り付けて安全性にもこだわりました。そのほかにも、段差の少ない玄関でもスムーズに靴の脱ぎ履きができるように折り畳み式のサポートチェアや大きな姿見も設置しています。
- ■株式会社上咲組
- 〒901-2215 宜野湾市真栄原1-21-1
- http://www.kamisakigumi.com/
- 所 在 地 :
- 那覇市
- 企画デザイン:
- (株)上咲組
- 敷地面積:
- 131.67㎡(39.90坪)
- 建築面積:
- 78.37㎡(23.74坪)
- 延床面積:
- 189.57㎡(57.39坪)
- 用途地域:
- 第二種高層住居専用地域
- 構 造:
- 鉄筋コンクリート造4階建て
- 完成時期:
- 2013年2月
- 施 工 業 者
- ●建築/(株)上咲組(担当者・屋良朝彦)
- ●キッチン水回り設備他/タカラスタンダード(株)