沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション
うるま市の住宅街に2012年1月に完成したYさん宅。
白い壁に覆われた室内に砂利敷きのコートが設けられた、明るく風通しの良い家です。
コートで広々、健康的な住まい
■家族をつなぐ動線
学校や幼稚園から帰ってきた子どもたちは、玄関の戸を開けて、キッチンにいる母親と目を合わせ、にっこりと笑顔を交わします。
「家を出入りするときはこうやって、自然に家族と顔を合わせられる動線にしたかったんです」と奥さま。玄関からダイニングに上がると、東側にはひと続きになった子ども室があり、キッチンに立つと部屋の隅々まで目が行き届きます。
このように家の中心を家族が集うにぎやかな空間に仕立てる一方で、和室と寝室は、子ども室を挟んで、家の中心から離れた場所にそれぞれ配置されています。さらに「来客があっても人目に付かず身支度できるように」と、リビングを通らずに寝室と洗面室、バスルームを直接行き来できる動線がキッチンの裏側に確保されています。
そしてYさん宅のハイライトといえば、大開口の引き戸を介して中庭とつながった、広々としたリビングでしょう。3枚の戸すべてが壁に収納できる引き込み戸なので、窓を開け放つと室内外が一体となった大空間が現れます。間接照明やダウンライトを多用し、白を基調にしたすっきりとしたデザインも、開放感の演出に一役買っています。
こうした間取りは「建築士さんから最初に提示されたプランのままです。私たちの要望が十分に反映されていて、あとはそれをベースに微調整を加えた程度です」とのこと。建築士の作品を初めて見たときに感じたセンスの良さは、間違いありませんでした。
右/「夫婦2人の身長を考慮してカウンターの高さを調整しました」と奥さま。すぐ背面には天井までの高さのパントリー収納を設置
左/「フラット35Sベーシック」のバリアフリー基準に対応するため、便座右手の壁にはりーふオリジナルの手すりが設置されています
■人も家も健やかに
結婚後、「いつかは家を」と考えていたYさんご夫妻が、本格的に家づくりを始めたのは3年ほど前。ご主人の実家近くにエリアを絞って土地探しを続け、ようやく現在の場所を見つけました。
依頼する建築士を選ぶ際の決め手になったのは、過去に手がけた住宅のデザインがお2人の好みに合っていたことに加え、「健康を意識した家づくりに積極的に取り組んでいること」とご主人。3人のお子さまをもつYさんにとって、「塗料一つをとっても細かくアドバイスしてくれました」という姿勢は心強い材料でした。
例えば使用した塗料をみると、扉や棚など建具の手に触れる木部には、食品レベルの安全性をもった亜麻仁油が主成分で、有害な化学物質を一切含まない自然塗料リボスを塗装。また湿気やにおいがこもりやすい収納スペースやシューズクロークの壁には、調湿と抗酸化作用が期待できるEM珪藻土を施工しました。
健康面に配慮したのは素材だけではありません。実際の住み心地も大きな要素です。
Yさん宅は通りに面して壁で覆われており、中庭から光と風を呼び込む「コートハウス」です。室内は明るく風通し良好で、しかもエントランス部分は通りまで視界が抜けるので閉そく感はまったくありません。
リビング脇にはお子さまのピアノ練習用に、ピアノルームを設置。かすかに聞こえてくる優しい音色が、新居での暮らしに花を添えています。
リビング、ダイニング、子ども室が一直線に並び視界広々。ダイニングのペンダントを除き、光源が直接目に入らないよう配慮した照明計画は建築士の提案です
コートからリビング方向を見る。リビングの開口部は横幅が360センチに及び、折れ戸タイプの窓ではかなりの重さになるため、開閉しやすいようにスライド式の引き戸にしました。コートには狭い庭でも使い勝手が良く庭木として人気の高いシマトネリコを植樹
寝室前の戸を開けるとウオークインクロゼットがあり、その先は洗面室、バスルームに通じています
自然塗料などを適材適所に使用して住み心地を高める
■住居スペースを密着させてコストダウンを実現。西面の壁は内断熱で暑さ対策――
建築士・大木聡さん談
Yさん宅が建つのは古くからの住宅がひしめく密集地です。プライバシーを確保するには近隣や通りからの視線を防ぐ必要があるため、西面に接道した家の正面を外壁で閉じ、中庭を設けて採光を図るプランにしました。
間取りの構成はYさんの要望をくみ取りつつ、中庭に面した南面にリビングを置き、水回りは北西にまとめるなど、風水的な要素も取り入れました。また建築コストを抑える工夫として、空間と空間の間に無駄なスペースができないよう極力密着させ、天井高は通常より低めの240センチに設定しています。それでも決して狭さを感じないのは、躯体に合わせてつり下げ式の引き戸を製作し下レールを取り除くなど、視界の妨げとなるものを省いているからです。ちなみに戸や棚などの建具はすべてオリジナルで製作しています。
家族が健康的に暮らせる家にするため、各部に使用する塗料は場所によって機能を使い分けました。前ページで名前の挙がったリボス塗料、EM珪藻土をはじめ、枠材や棚板には光が当たると抗菌作用を発揮する光触媒塗料を塗装しています。
このほか暑さ対策として、西日の影響を受ける西面の壁全体と、西面からの熱の伝導が懸念される北面と南面の壁60センチ分には、業務用冷凍庫などにも使用される吹き付け断熱材を施工。また子ども室はお子さまの成長に合わせて自由に仕切れるように設計し、室内の床はすべて、明るい色合いで傷つきにくいカバ桜の無垢(むく)フローリングにしています。
玄関。左手の戸を開けるとシューズクロークへ通じ、正面とどちらを通っても家に上がれます
和室。障子は、框(かまち)と組子(くみこ。縦横に組まれた部材)の幅を18ミリで統一した通称「吉村障子」を使用。障子紙は月桃障子紙です
子ども室。戸を開けると部屋の境界がほぼ分からなくなります
大木聡さん
■家づくりのヒント
■高さ240センチの大開口でコートとリビングを一体化
壁に囲まれた空間で採光と通風を確保するために利用されるのが中庭(コート)です。Yさん宅のコートはエントランスの左手、リビングの南面にあり、除草シートの上に砂利を敷いてクールな印象に仕上げています。リビングには天井高と同じ240センチの高さの引き戸を特注し、開放感を損ねないように工夫しています。
- ■株式会社りーふ
- 宜野湾市伊佐3-3-21
- http://leafreef.ti-da.net/
- 家族構成:
- 夫婦、子ども3名
- 所 在 地 :
- うるま市
- 設 計:
- 株式会社りーふ 担当/大木聡
- 敷地面積:
- 330.60㎡(約100坪)
- 建築面積:
- 177.56㎡(約53.71坪)
- 延床面積:
- 132.93㎡(約40.21坪)
- 用途地域:
- 第一種住居地域
- 構 造:
- 鉄筋コンクリート造
- 完成時期:
- 2012年1月
- 施 工 業 者
- ●建築/株式会社りーふ 担当・兼次宏樹
- ●電気/未来電気設備
- ●水道/有限会社當山設備興業
- ●キッチン/タカラスタンダード株式会社
- ●塗装/有限会社トクダ美装プラン