沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション
建築やインテリア関係のデザイン事務所を経営している花城さん夫妻は、5階建ての賃貸併用住宅を建て、その4、5階に住まいを構えました。
ヨーロッパと沖縄のエッセンスを取り入れた外観デザインと、子育てのしやすい空間構成が魅力の住まいです。
子育てとインテリアを楽しむ家
■専門性を生かして夫婦協働の家づくり
買い物や交通の利便性が高く、公園や医療機関、小中学校なども整備されていることから、子育ての環境としても人気が高い那覇市の新都心。「共働きの私たちにとって、徒歩約2分の距離に小学校がある環境は理想的でした」と土地選びの理由を話すのは、建築やインテリア関係のデザイン事務所を経営している花城さん夫妻。今年2月、新都心のメーンストリート沿いに5階建ての賃貸併用住宅を建て、そのビルの1階に事務所、4階と5階に住まいを構えて新しい環境での暮らしをスタートさせました。
日ごろからデザイン業務を行う花城さん夫妻にとって、自らの家づくりはこだわりをいかんなく発揮できる絶好の機会。「ヨーロッパの雰囲気を醸し出しつつ沖縄の街並みになじむ建物を目指して、琉球石灰岩や花ブロックなど沖縄の素材を取り入れたシンプルなデザインを心がけました」と話すインテリアコーディネーターの奥さまは、コンセプトの立案とプランニングを担当。ご主人は施工管理と全体統括を受け持って、夫婦協働で家づくりに取り組みました。
住宅部分は子育てのしやすさを第一に考えて、リビング・ダイニングをメーンにした間取りを希望。ところが細長い形状の土地なので、どうしても廊下ができて居室が狭くなってしまいます。そこで、「子どもたちの居場所や動きを把握しやすいことに加え、いかにして室内を広く見せるかという空間構成を検討しました」と振り返ります。
キッチンとスタディコーナーの後方には、収納スペースをふんだんに確保したほか、カウンターデスクを設置しました。鉛筆や教科書などのこまごまとした物の多いスタディコーナーはパーテーションで程よく目隠し
廊下スペースを利用して、ゆったりと読書が楽しめる図書コーナーを確保。向かい側には子ども室があります
着替えや就寝ができる必要最小限の広さの子ども室は、2人のお子さまの共用スペース。廊下の建具をケーシングと呼ばれる枠で囲んで、インテリアのポイントにしています
キッチンの立ち位置からパブリックエリア全体が見渡せます。スタディコーナーの奥に見えるのは、手洗いスペースとトイレです
梁の形状を利用して設置した照明の明かりが、長年愛用しているダイニングセットの木質感を引き立てます
■キッチンの隣にスタディコーナーを設置
アイボリーを基調にした外観は、欧米風なデザインの窓や琉球石灰岩調の外壁材がアクセントになって、ヨーロッパのこじんまりとしたホテルを思わせる佇まいです。「開口部を大きく取って室内にたっぷりと光を取り込むより、沖縄ならではの光と影のコントラストを生かし、木陰にいるような居心地をつくり出したかった」と奥さま。そこで窓については、通風採光と外観デザインの相乗効果を狙って、程よいサイズのものを並列して配置しました。
玄関を挟んで右側は、LDKを配したパブリックエリアです。仕事や家事をこなしながら子どもたちと自然に関われるよう、キッチンの並びにはスタディコーナーを確保。さらに、お子さまが帰宅した時の動線に合わせて、スタディコーナーの手前に手洗いスペースを配したほか、学習机の背面にはかばんや勉強道具をしまえる収納棚を設置。これなら自然と整理整とんの生活習慣が身に付きそうです。また、スタディコーナーからはリビングにあるテレビは見えないのに、向かいのテラスの緑や空は見えるというパーテーションを設置。来客時には目隠しにもなる絶妙な高さです。
一方、左側のプライベートエリアには、コンパクトな子ども室と、廊下スペースを利用して家族共用の図書コーナーを確保したほか、上階には趣味のラジコン製作を楽しむためのご主人の部屋があります。
子育てとインテリアが楽しめる快適な住空間を実現した花城さん宅。細長い空間の中には、暮らしを楽しむ要素がいくつも散りばめられています。
身支度や家事が効率的に行えるように、寝室は廊下と家事室兼洗面室につなげて回遊動線をつくり出しています
5階のご主人の趣味室は、コンクリートの質感を生かしたシンプルな内装仕上げです
構造体の梁や柱をインテリアに活用する
■LDKはインテリアが映えるオフホワイトで統一 ――
花城理さん、上原(花城)牧子さん談
敷地は間口9メートル、奥行き30メートルの細長い形状。両側にはビルが近接して建っており、車の往来や人通りの多い道路に面しています。この辺りは駐車場の確保が難しいため、建物全体のプランニングに当たっては、2階と3階の賃貸スペース用の駐車場の確保とセキュリティを最優先しました。
1階の階高を上げて建物の後方に立体駐車場を設置し、セキュリティ設備を導入したほか、上の階への侵入の足場に使われないように、排水管と給水管は1階の室内に配管しました。
那覇市の定める用途地域により建物の高さには制限があるため、1階の階高を高くした分、各階の階高は抑える必要がありました。そこで4階と5階の住宅部分は、ダイニングの上部にある梁にペンダントライトを設置したり、テラス側はカーテンボックスに見える収まりにして、梁の形状をインテリアに活用しました。
そのほかにも、収納を多く設けて掃除のしやすい空間づくりをしたことで、家事効率の良い暮らしやすい家になりました。
インテリアで特にこだわったのは配色です。例えば、LDKはグリーンや小物が映えるようにオフホワイトで統一。家具などの木質感を生かして「優しいけれど、子どもっぽくない」ナチュラルな雰囲気を演出しました。子ども室は壁を黄色にしたり、車をモチーフにしたロールスクリーンを選ぶなどしてカラフルにまとめています。
働きながら子育てをしていると、毎日が本当に慌ただしくて「子どもたちと向き合う時間を増やさなくては」という、母親としての悩みが常にありました。でもキッチンとスタディコーナーを並べた今の住まいに移ってからは、家事をしながらでも子どもたちに目配りできますし、勉強で分からないことがあるとすぐ聞きに来るので安心です。子どもたちも、どこで何をして、どこに何を収めればいいかというのが、本人たちなりに分かっているので、伸び伸びと過ごしています。
玄関から見える場所にある手洗いスペースは、デザイン性にもこだわって製作。植物をモチーフにした照明が空間のアクセントに
キッチンの梁に間接照明を設置。LDKはシーンに応じて多彩な明かりが楽しめます
光と風をパブリックエリアに導くためのテラス。緑や空を眺めていると、ここが新都心であることを忘れてしまいそう
給排水などの配管を極力外部に露出せず、窓の形状や琉球石灰岩など細部が際立つ外観を実現
花城理さん(左)、上原(花城)牧子さん
■家づくりのヒント
■アイランド型キッチンを常にすっきり
オープンなアイランド型キッチンは、ワークトップに物を置くだけで雑然とした雰囲気になりがちなため、花城さん宅のキッチンには水切りカゴを2つビルドイン。大きな鍋やフライパン、まな板や漆器といった食洗機に入らないものは、手洗いしてこの水切りカゴに入れて乾かします。おかげで、キッチンはすっきりした状態をキープしやすいそうです。
- ■有限会社ムーブプランニング
- 那覇市銘苅2-4-41
- http://move-planning.com/
- 家族構成:
- 夫婦、子ども2人
- 所 在 地 :
- 那覇市
- 設 計:
- (有)ムーブプランニング/(株)共和技研
- 敷地面積:
- 332.48㎡(100.58坪)
- 建築面積:
- 177.14㎡(53.58坪)
- 延床面積:
- 179.56㎡(54.32坪)
- 用途地域:
- 第2種住居地域
- 構 造:
- 鉄筋コンクリート造
- 完成時期:
- 2012年2月
- 施 工 業 者
- ●躯体工事/(株)共和技研
- ●内装工事/(有)ムーブプランニング
- ●電気/忠建設
- ●水道/泉水設備(株)
- ●キッチン/(有)カーサ
- ●ガス/(有)丸徳ガス産業
- ●木工事/盛工務店