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沖縄の家週刊かふう特別編集「こんな家に住みたい」セレクション

沖縄の家selection51

家族四人で暮らすIさん宅は、建て替え前に住んでいた木造平屋の「空気感」を受け継ぎ、明るさや居心地、家族のコミュニケーションを大切にした住まいです。
近接する建物や町並みを借景に取り入れながら、解放感いっぱいの空間に生まれ変わりました。

家族の気配を感じ合う箱形空間

家族の気配を感じ合う箱形空間

■家づくりの原点は平屋の木造家屋

 Iさんの家づくりのテーマは「家族」。敷地いっぱいに取られた二階の居住スペースは、間仕切りを開けると空間全体が一続きになった大広間のようになり、どこにいても家族の気配がして安心感を覚えます。
「以前は同じ敷地内で、築五十年以上の木造平屋に住んでいました。昔の沖縄のように戸を開け放して生活し、それはそれでとても快適な暮らしでした。ただ、二十坪弱の小さな家だったので、子どもが二人生まれて手狭になり、将来を考えて建て替えることにしたんです。それでもやはり、住むなら平屋のほうが便利でいいと思っていました」とIさんは振り返ります。
 新しい家は、子どもたちが部屋にこもりきりになることなく、居間を中心に家族団らんの輪が絶えない明るい住まい。そんなイメージを描いていました。
 Iさん宅のある場所は、周囲をアパートや工場施設などに囲まれた密集地。すぐ隣りには奥さまの実家があります。家づくりを考え始めたころは、敷地の半分に住宅を建て、残りを駐車場にするつもりでした。その案を持って建築士に相談したところ、敷地いっぱいに建物を広げ、一階をピロティーにして二階を平屋風の居住スペースにする、現在のような間取りを提案されました。
「模型を見て、“こういう建て方もあるんだ”と一目で気に入りました。あとはそれをベースにしながら、細かい修正を加えていくだけでした」
 当初の案にロフトと屋上が加わり、新居は実質三階建ての住まいに。築五年が過ぎ、子どもたちは思春期にさしかかってきましたが、家づくりのもくろみ通り伸び伸びと明るく育っています。

家族の気配を感じ合う箱形空間

ヴォールト屋根の窓からは屋上へも出られます

■引き戸を利用した独特の空間づくり

 Iさん宅の二階は、直方体型のすっきりした空間に、さまざまな住まいの機能がコンパクトにまとめられています。中心に居間とキッチンを据え、「水回りボックス」と「収納ボックス」を両サイドに配置。残りのスペースを引き戸で仕切ると、四隅にプライベート空間が生まれます。現在はこれらのスペースを、エントランスホール、子ども室、和室としてそれぞれ使用しています。引き戸は半透明のガラス戸のため、閉めきっても圧迫感はありません。
「子どもたちは部屋にいるときも戸を開けっ放し。友だちが来ると、和室で一緒に勉強したり遊んだりしています。和室は寝室として、家族そろって寝ることもあります」とIさんは満足そう。
 エントランスホールは広く、アスリートであるIさんのトレーニングルームを兼ねています。玄関の戸を開けると二台の自転車が目に飛び込み、インテリアとしても家の特色をよく表しています。
「毎日のトレーニング時間は仕事前後の朝と夜。ただ、みんなが寝ていることが多いから、外へ走りに行くことが多いですね」と苦笑い。とはいえ、機材置き場としては絶好のスペースで、横の「収納ボックス」を含め家の収納力は豊富です。
「収納ボックス」の上のロフト空間はIさんの書斎で、別名「天守閣」。居間の脇には奥さまが所望したアイランド型のキッチンが置かれ、こうした間取り一つからも家族の生き方が垣間見えます。
 ロフトはもう一カ所、「水回りボックス」の上にあります。現在は子どもたちのフリースペースですが、奥さまの個室として検討中。「コーヒーを持って上れるような、安全なはしごはないかしら」と思案しています。

家族の気配を感じ合う箱形空間

リビングルームはエントランスや和室とひとつながり。テレビ台の奥にあるのが「収納ボックス」

家族の気配を感じ合う箱形空間

南西方向からの外観。目隠しのルーバーは、玄関と和室で羽根板の間隔を変えています

家族の気配を感じ合う箱形空間

「収納ボックス」上のロフトはIさんの書斎

家族の気配を感じ合う箱形空間

キッチンに立つと家全体が見渡せます

家族の気配を感じ合う箱形空間

ピロティーから玄関へのアプローチ。色彩の調和を考え、壁の色を「水回りボックス」と同じ水色に

家族の気配を感じ合う箱形空間

右/エントランスホールは自転車を2台並べても十分な広さがあります
左/テラスから渡り廊下を伝って奥さまの実家と連結

借景を利用して外に開かれた家に

■室内空間を単純化して家族のイベントに対応 ―― 建築士・古堅健一さん談

 Iさん一家はとても明るい家族です。家づくりの相談で最初にお会いしてから、この明るさの源泉は何だろうと考えていたところ、その一因は以前住んでいた平屋住宅の、あの開放的な生活環境にあるのではないかと思い当たりました。敷地の周囲には建物が近接し、通常なら外からの視線を遮断して内部にオープンな空間を設けるのですが、それではせっかくの家族の明るさがうまく引き出せない。幸いなことに、北東には一面をツタに覆われた緑の壁があり、北西は昔ながらの赤瓦が見渡せたので、これらを借景に取り入れながら、外に開かれた家の設計にしました。アパートに接する南西には、視線よけのルーバーを設置しています。
 室内の間取りも同様に、平屋の良さを生かすことを重視しました。部屋ごとに壁で仕切るのではなく、ワンルーム的な空間を与えて、何らかの仕掛けによってプライベートスペースが生まれるようにするのです。そこで、二階の両サイドに「収納ボックス」と「水回りボックス」を置き、それぞれの両脇にできた四つのスペースを半透明の引き戸で仕切って子ども室などの個室を確保し、各ボックス上部をロフトにしました。さらに解放感を出すために、例えば天井の照明器具をエントランスから居間、子ども室まで一直線に並べたり、開口部の視界を損なわないよう縦型のロールスクリーンを設置するなど工夫しています。収納スペースは「収納ボックス」のほか、和室を逆スラブにして床下に物置と引き出しを造りました。
 こうした無駄のないすっきりした空間の中、すべての部屋には出窓のカウンターがあります。記念写真など家族の思い出置き場として使ってもらえたらうれしいですね。

家族の気配を感じ合う箱形空間

2つの子ども部屋は「水回りボックス」上のロフトを介して空間的につながっています

家族の気配を感じ合う箱形空間

引き戸を開けると、まっすぐに伸びる天井の照明ラインが視覚的な解放感を演

家族の気配を感じ合う箱形空間

和室の床下収納スペース。深さも十分で容量たっぷり

古堅健一さん

古堅健一さん

■家づくりのヒント

■線的な建築材をなくして解放感を演出

家族の気配を感じ合う箱形空間

壁には回り縁や幅木がなく、壁・床・天井を面的に一体化させることですっきりした空間を実現。引き戸も額縁やレールがなく、L字型のアルミ金具を戸の上部に取り付け、天井のスリットに通す仕組みになっています。引き戸には衝撃に強いポリカーボネート板をはめ込み、周囲の枠組みを極力小さくすることで、戸を閉めても十分な採光が得られ室内を明るく保つことができます。

■一級建築士事務所 エフ エー ディ
浦添市内間2-1-2 国仲ビル3F
098-874-8066
098-874-8067
http://www2.odn.ne.jp/fad
家族構成:
夫婦、子ども2人
所 在 地 :
那覇市
設  計:
一級建築士事務所FAD 古堅健一
敷地面積:
298.83㎡(約90.39坪)
建築面積:
147.61㎡(約44.65坪)
延床面積:
278.86㎡(約84.35坪)
用途地域:
第1種低層住居専用地域
構  造:
鉄筋コンクリート造
完成時期:
2004年3月

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